先天性股関節脱臼検診

股関節脱臼とは?知られざるリスク

赤ちゃんの股関節がずれたり外れたりする状態が「先天性股関節脱臼(発育性股関節形成不全)」です。男女比は1:5~9で女児に多く、足の変形や歩行障害の大きな原因となることがあります。

何もせず放置すると将来的に痛みや歩行障害、変形性股関節症を引き起こすこともあります。そのため、早期発見が何より重要です。


どれくらい身近?発症率とリスク

日本では1,000人に2~5人の赤ちゃんが先天性股関節脱臼を発症すると推計され、女の子、骨盤位(逆子)分娩、家族歴のある場合にリスクが高いとされています。

近年は乳児健診での検診が普及し、発症率は減少傾向ですが、見逃し例もまだあるため注意が必要です。


検診はいつ?どこで受けるの?

多くの自治体では、赤ちゃんが生後3~4か月頃に行われる乳児健診の一環で「先天性股関節脱臼検診」を実施しています。健診の受診票は出生後に自治体から郵送され、指定医療機関(主に整形外科併設のクリニックや病院など)で無料で受けられます。

受診前に医療機関に連絡し、受付時間や持ち物(母子健康手帳、受診票など)を確認するのがおすすめです。


受診の流れと診察のポイント

医師はまず、赤ちゃんの股関節の動きや開き具合(開排制限)を丁寧にチェックします。具体的には、股関節を90度に曲げて外側へ開いたときの開排角度を測定。70度以下の開排制限がある場合は陽性とされます。また、次のポイントも大切です。

  • ・太もも、鼠径部(股のつけ根)の皮膚のしわの左右差
  • ・脚の長さの左右差(Allisサイン)
  • ・股関節を動かす際のクリック音(骨頭が臼蓋から外れる感触)

これらの所見を総合して判断し、リスクの高い赤ちゃんや開排制限がある場合は二次検診へ紹介されます。


画像検査でさらに詳しく

疑わしい症状がある場合、多くの医療機関ではレントゲン検査(X線)や超音波検査(エコー)を使って精査します。

  • ・軟骨や軟組織も描出できる超音波検査
  • ・生後3か月以降に行われる骨の形成を評価するレントゲン検査

を使い分けています。


もし異常が見つかったら?治療のポイント

乳児期に脱臼が早期に見つかれば、多くのケースで「リーメンビューゲル装具」などの保存療法で治癒可能です。これは股関節を正しい位置に安定させるやわらかく軽い装具で、痛みもほぼありません。

  • ・治療開始はできるだけ早い(3~6か月以内)方が効果的
  • ・装具療法の成功率は90%以上と非常に高い
  • ・治療期間や通院頻度は症状により異なるが、通常は数ヶ月継続

放置した場合は手術が必要になることや、将来の歩行障害リスクが高まるため、決して見逃さないことが重要です。


自宅でのケアと注意点

赤ちゃんの股関節を守るため、日常の抱っこやおむつ替えから気をつけることがあります。

  • ・抱っこは足を自然なM字型(カエル足)になるように広げて行う
  • ・足をいっぱいに伸ばして抱きかかえることは避ける
  • ・おむつや服は足の動きを妨げないゆったりしたものを選ぶ
  • ・寝かせる場所や姿勢も大切で、過剰に足の自由を制限しない

こうしたちょっとした工夫で、股関節脱臼の予防や悪化防止に役立ちます。


複数回の受診でしっかりフォロー

一度の検診で終わらず、必要に応じて複数回の検診や経過観察が行われます。特にリスク児や軽度の異常があった場合、赤ちゃんの成長に合わせて定期的に受診を続けることが推奨されます。


よくある質問Q&A

Q1: 検診で何をされるの?
股関節の可動域や皮膚のシワの左右差をチェックし、異常が疑われれば超音波やレントゲン検査をします。

Q2: 検診の費用は?
多くの自治体で無料ですが、精密検査や治療は保険診療扱いになります。子ども医療費助成制度の対象になる場合があります。

Q3: 家族に股関節脱臼の人がいる場合どうしたら?
家族歴がある場合は特に慎重に健診を受け、必要なら専門医に相談しましょう。早期発見が何より大切です。


まとめ:未来の健康は早期検診から

先天性股関節脱臼は、早期発見・早期治療すれば完治可能な病気です。3~4か月児健診での股関節検診を必ず受け、気になる症状があれば専門医に相談しましょう。ご家庭でできる予防策も実践し、赤ちゃんの健やかな成長と明るい未来を守りましょう。

赤ちゃんの成長をしっかりサポートするために、いつでも気軽に当院へご相談ください。

小児側弯症検診

側弯症とは?背骨の曲がり、見逃さないで

側弯症は背骨が左右に曲がり、ねじれを伴う状態を指します。特に成長期の子どもに多い病気で、日本では約2%の子どもが発症するとされます。

側弯症はそのまま放っておくと背骨の変形が進行し、重度になると肺や心臓に影響が出ることもあるため、早期発見・早期治療が非常に重要です。


なぜ側弯症検診が必要なのか?

側弯症は初期に痛みや目立った症状がほとんどないため、家庭で見逃されやすい疾患です。学校健診や自治体の検診で定期的に行うことで、

  • ・病気の早期発見
  • ・適切な保存療法(装具治療など)の開始
  • ・進行を防ぎ、手術の回避や軽減

を目指しています。


側弯検診はいつ?誰が受ける?

主に小学校高学年から中学生(10歳前後から15歳頃)を対象に学校健診で実施しています。
これは思春期に側弯症が発症・進行するケースが多いためです。自治体によっては保育園・幼稚園児など低年齢層の検診も取り入れています。


ご自宅でできる簡単チェック方法

側弯症を疑うなら、以下のようなポイントをチェックしてみましょう。

  1. 立位チェック(後ろ向きに立ち、「気を付け」の姿勢)
    • ・肩の高さの左右差
    • ・肩甲骨の突出や高さの差
    • ・ウエストライン(脇のライン)の左右非対称
  2. 前屈検査(腰かけから前にゆっくりおじぎ)
    • ・肋骨や腰の左右の盛り上がり(肋骨隆起)があるか

これらのどれか一つでもあれば、専門医の診察を受けることをおすすめします。


医療機関での検診方法

専門医による側弯検診はさらに詳しく行われます。

  • ・身体計測や姿勢観察で異常を確認
  • ・立位と前屈姿勢で筋肉の左右差、肋骨隆起をチェック
  • ・必要に応じてレントゲン検査を行い、背骨の曲がり具合(「コブ角」)を測定

コブ角が10度を超えると側弯症と診断され、進行リスクに応じて治療や経過観察が検討されます。


治療の基本は早期発見・保存療法

側弯症治療は進行防止が中心で、主に以下の3段階があります。

  • 経過観察:コブ角が小さく成長が終了した場合、観察のみで済むことも。
  • 装具療法:成長期に15度以上の曲がりや進行傾向がある場合に開始。装具で背骨の進行を抑え、重症化を防ぎます。
  • 手術療法:進行が著しく、肺機能障害のリスクがある場合に検討されます。

装具療法は子どもに負担なく行えるもので、多くの患者で進行を食い止められます。


側弯症を予防・早期発見するためにできること

  • ・ご家庭での定期的なチェック(前記の簡単検査方法)
  • ・学校や自治体の検診を必ず受ける
  • ・お子さんの姿勢や左右のバランスに注意し、異常があれば整形外科を受診
  • ・適度な運動や筋力強化(専門家の指導で)

これらが早期発見と重症化防止に大きくつながります。


Q&A よくある相談

Q1: 側弯症は痛みがありますか?
多くは初期に痛みがなく、気づかれにくいです。進行してから痛みや背中の違和感が出る場合があります。

Q2: どうして背骨が曲がるの?
原因不明の特発性側弯症が約80%を占めますが、一部に先天性や神経筋疾患によるものもあります。

Q3: 装具療法は子どもにとってつらくない?
現代の装具は軽量で着脱簡単。子どもの成長に合わせて調整され、負担軽減に努められています。


まとめ:側弯症検診は子どもの未来への大切なステップ

側弯症は見た目だけでなく、成長や健康に大きな影響をおよぼす可能性のある病気です。放置せず、学校健診や自治体の検診を活用し、ご家庭でも気になる症状があればすぐに専門医に相談しましょう。

早期発見と適切な治療で、痛みのない美しい姿勢を保ち、健やかな成長をサポートします。未来の健康のため、側弯検診をぜひ積極的に受けてください。

当院でも気軽にご相談を承りますので、いつでもご連絡ください。