目次
テニス肘を放置することの危険性3選
肘の痛みが慢性化し、日常生活に支障をきたす
テニス肘は、初期段階では軽い痛みや違和感を感じる程度の場合もありますが、放置することで痛みが強くなり、慢性化してしまうことがあります。慢性化すると、安静時にも痛みを感じるようになり、日常生活に様々な支障をきたすことがあります。
手術が必要になる可能性がある
テニス肘の治療は、保存療法が中心となります。多くの場合、保存療法で症状は改善しますが、放置して症状が悪化すると、保存療法では効果が得られず、手術が必要となる可能性があります。
手術が必要なケースは約10%以下とされており、腱の修復や再建を行う必要があります。手術には、身体への負担が大きいこと、入院が必要になること、仕事や日常生活に制限が生じることなどのデメリットもあります。そのため、なるべく早期に治療を開始し、手術を回避することが重要です。
他の関節疾患のリスクが高まる
テニス肘は、肘関節の外側にある筋肉や腱の炎症です。この炎症を放置することで、周辺の組織にも負担がかかり、他の関節疾患のリスクが高まる可能性が示唆されています。
例えば、手首や肩の痛み、腱鞘炎などが挙げられます。
また、肘の痛みをかばう動作を続けることで、身体のバランスが崩れ、腰痛や肩こりなどの症状を引き起こす可能性もあります。
例えば、テニス肘で右肘が痛い場合、無意識のうちに左腕で荷物を持つようになります。すると、身体の重心が左に偏り、背骨や骨盤に負担がかかりやすくなります。その結果、腰痛や肩こりを引き起こす原因となるのです。
原因
テニス肘は、正式名称を外側上顆炎といい、肘の外側にある骨の突起(外側上顆)に付着する筋肉や腱に炎症が起きることで痛みを生じる疾患です。(下図)
テニス肘は35歳から54歳までの1~3%に発生し、再発率が高いことが報告されています。
テニス肘は、その名前からテニス選手に多い疾患と思われがちですが、実際には様々な原因で発症します。テニスやバドミントンなどのラケットスポーツはもちろんのこと、野球、ゴルフ、バレーボールなど、手首を使う動作が多いスポーツで発症リスクが高くなります。
また、スポーツ以外でも、パソコン、タイピング、ピアノ演奏、大工仕事、工場での組み立て作業、料理人、美容師など、様々な職種で発症リスクがあります。

症状
肘の外側から前腕にかけての痛み
肘の外側から前腕にかけて鈍い痛みや違和感を感じることがあります。
動作で痛みが増強する
物を持ち上げる、ドアノブを回す、タオルを絞るといった動作で痛みが悪化することが挙げられます。これは、これらの動作は共通して、手首を反らす筋肉(橈側手根伸筋など)が使われており、この筋肉が外側上顆に付着しているためです。
炎症を起こしている腱に繰り返しストレスがかかることで、痛みが強くなります。初期は軽い痛みでも、放置すると日常生活に支障をきたすほどの強い痛みになることもあります。
手首を反らせると痛む
テニス肘では、手首を手の甲側に反らせる動作(背屈)で痛みが増強されます。この痛みは、手首を反らす際に働く筋肉が、炎症を起こしている外側上顆に付着していることが原因です。健常な状態では、手首を反らせても痛みは生じませんが、テニス肘を発症すると、この動作で強い痛みを感じることがあります。

治療法
保存療法
テニス肘の治療は、保存療法から始めることが一般的です。具体的には、以下の方法があります。
安静: テニス肘の初期段階では、炎症を起こしている腱を休ませることが重要です。痛みが強い場合は、テニスや重いものを持ち上げるなど、肘に負担をかける動作を控えましょう。
消炎鎮痛剤: 炎症を抑え、痛みを和らげる薬です。内服薬や外用薬(塗り薬、湿布)があります。医師の指示に従って服用または使用してください。
装具療法: サポーターやテーピングを使用して肘関節を固定することで、負担を軽減し、炎症の悪化を防ぎます。サポーターは、日常生活での負担を軽減するのに役立ちます。テーピングは、スポーツ活動時に肘関節をサポートする効果があります。
- 体外衝撃波療法(ショックウエーブ):衝撃波という圧力波を、体の外から患部(肘)に当てる治療法です。この衝撃波は、近年、腱炎などのスポーツ障害の治療に広く用いられています。当院では、導入予定です。
理学療法: 理学療法士によるリハビリテーションです。
- マニュアルセラピー: 理学療法士が手を使って関節や筋肉の動きを調整することにより、痛みを和らげ、機能を回復させます。肘関節の動きを改善し、周囲の筋肉の緊張を和らげる効果が期待できます。
- 伸張性筋収縮トレーニング: 筋肉を伸ばしながら力を加える特殊なトレーニング法です。テニス肘の原因となる筋肉(手首を反らす筋肉など)の柔軟性を高め、筋力強化を図ります。
2022年の研究では、マニュアルセラピーと偏心性筋力トレーニングを組み合わせた理学療法は、テニス肘の治療において特に有効性が高いと報告されています。
手術療法
保存療法で効果が見られない場合、手術療法を検討します。手術療法が必要となるケースは約10%以下とされています。
予防策
テニス肘は、予防することも可能です。以下の点に注意することで、テニス肘の発症リスクを減らすことができます。
適切なウォーミングアップ: 運動前に、肘周辺の筋肉をしっかりと温めることで、筋肉の柔軟性を高め、怪我を予防します。
ストレッチ: 肘や手首、前腕のストレッチを行うことで、筋肉の柔軟性を高め、負担を軽減します。特に、手首を反らす筋肉(橈側手根伸筋など)のストレッチは重要です。(下図)
フォームの改善: 間違ったフォームでスポーツを行うと、肘に過剰な負担がかかり、テニス肘の原因となります。専門家の指導を受けるなどして、正しいフォームを身につけましょう。
適切な休息: スポーツや作業後は、十分な休息を取り、肘を休ませることが大切です。筋肉疲労を回復させることで、テニス肘の予防につながります。
テニス肘は再発しやすい疾患であるため、治療後も予防策を継続することが大切です。

まとめ
テニス肘を放置すると、痛みが増し、慢性化してしまうだけでなく、日常生活にも大きな支障をきたす可能性があります。さらに、手術が必要になるケースや、他の関節疾患のリスクが高まることも。テニス肘は早期発見・早期治療が大切です。
この記事では、テニス肘の放置による危険性、主な症状と原因、そして治療法と予防策を詳しく解説しました。心当たりのある方は、放置せずに早めに医療機関を受診し、適切なケアを受けるようにしましょう。快適な日常生活を送るためにも、テニス肘の知識を深め、予防策を心がけてみてください。
参考文献
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