肩腱板損傷はどのくらいで治る?日常生活への影響と回復のタイムライン

肩の痛み、特に腕を動かす時に激しくなる場合は、肩腱板損傷かもしれません。

学会によると、肩の痛みで医療機関を受診する患者の約半数が、この肩腱板損傷を抱えているというデータも。 この身近な疾患は、加齢や激しい運動だけでなく、日常生活の些細な動作がきっかけで発症することも。

本記事では、肩腱板損傷の症状を簡単に解説し、さらに3つの治療法と、それぞれの復帰時期の目安をご紹介します。

肩の痛みを我慢せず、快適な日常生活を取り戻すためのヒントが満載です。

肩の痛みは、日常生活に大きな支障をきたす悩ましい症状です。

特に、腕を動かすと痛みが走る場合は、肩腱板損傷の可能性が考えられます。肩腱板損傷とは、肩関節の安定性を保つために重要な役割を果たす腱板(筋肉と腱の複合体)が、加齢や使いすぎ、外傷などによって損傷を受けた状態です。

この損傷は、若い健康な方から高齢者まで、様々な原因で起こり得ます。肩腱板損傷による代表的な症状は4つです。

  1. 肩の痛み
  2. 肩を動かすと痛みが強くなる
  3. 夜間痛、寝ているとき痛い
  4. 肩の動きが悪い、可動域制限

肩の痛み、辛いですよね。特に、腕を上げるときに痛む、夜も痛くて眠れない、といった症状があると日常生活にも大きな支障が出てしまいます。

肩腱板損傷は、肩関節の安定性を保つ腱板が損傷した状態です。加齢や使いすぎ、外傷などが原因で起こり、若い方から高齢者まで幅広い年齢層で発症する可能性があります。

肩腱板損傷の治療は、大きく分けて保存療法手術療法薬物療法の3つがあります。それぞれの治療法の特徴や期間、そしてどのような方に適しているのか、具体的な症例を交えながら詳しく見ていきましょう。

保存療法(リハビリテーション)

保存療法は、手術をせずに肩腱板損傷を治す方法です。
主な治療法はリハビリテーションで、肩の周りの筋肉を鍛えたり、柔軟性を高めたりすることで、肩の動きを良くし、痛みを和らげます。

リハビリテーションは、理学療法士の指導のもとで行います。
具体的な方法としては、ゴムチューブを使った運動、温熱療法、電気治療など、様々な方法があります。

例えば、ゴムチューブを引っ張る運動では、腕を横に広げたり、前に伸ばしたりすることで、肩の筋肉を強化します。
50代の女性で、重い荷物を持ち上げた際に肩を痛めた患者さんは、このゴムチューブを使ったリハビリテーションで痛みが軽減し、日常生活動作が改善しました。

温熱療法では、温めたタオルやパックを肩に当てることで、血行を促進し、筋肉の緊張を和らげます。
70代男性の患者さんで、夜間の肩の痛みで悩んでいた方は、温熱療法とストレッチを組み合わせることで、痛みが軽減し、睡眠の質が向上しました。

保存療法は、比較的軽度の肩腱板損傷に有効です。
日常生活での注意点を守ることも重要です。重いものを持つことや、腕を無理に上げることは避けましょう。

適切なリハビリテーションと日常生活での注意を組み合わせることで、多くの場合、手術をしなくても症状を改善できます。
ある研究では、保存療法によって肩の機能、痛み、生活の質が改善することが示されています。

手術療法

手術療法は、肩腱板が大きく断裂している場合や、保存療法で効果が見られない場合に選択される治療法です。手術には、関節鏡下と、直視下の手術の2種類があります。

関節鏡を使った手術は、小さな穴を数カ所開けて、カメラや器具を入れて行う手術です。傷口が小さいため、体への負担が少なく、回復も早いというメリットがあります。

直視下手術は、肩を切開して行う手術です。関節鏡では難しい複雑な断裂の場合に選択されます。60代女性で、転倒して肩を骨折し、同時に腱板も大きく断裂した患者さんは、直視下手術を受け、その後、集中的なリハビリテーションを行い、日常生活動作を取り戻すことができました。

手術後もリハビリテーションは不可欠です。

術後のリハビリテーションは、肩の可動域を回復させ、筋力を強化することを目的として行われます。リハビリテーションの内容は患者さんの状態に合わせて調整されます。

薬物療法

薬物療法は、痛みや炎症を抑えることを目的とした治療法です。痛み止めや消炎鎮痛剤など、様々な種類の薬が使用されます。内服薬だけでなく、湿布薬や注射薬などもあります。

薬物療法は、他の治療法と併用されることが多いです。
例えば、保存療法を行っている間、痛みを和らげるために薬を服用することがあります。
30代女性で、パソコン作業で肩を痛めた患者さんは、リハビリテーションと並行して薬物療法を行い、痛みが軽減しました。

また、手術後にも、痛みや炎症を抑えるために薬が処方されます。

薬物療法は、痛みを軽減し、日常生活を楽にするために役立ちます。

各治療法の期間

  • ・軽度の損傷の場合、保存療法で数ヶ月で日常生活に支障がない程度に改善
  • ・中等度の損傷の場合は6ヶ月から12ヶ月程度
  • ・重度の損傷の場合は1年以上
  • ・手術療法の場合、手術後4週間から6週間は装具固定を行い、その後、約24週(半年)間程度のリハビリテーションが必要

それぞれの治療法に必要な期間は、損傷の程度や患者様の状態によって異なります。

肩腱板損傷の治療法や回復までの期間について解説しました。

肩の痛みや動かしづらさは、日常生活に大きな支障をきたします。

保存療法や手術療法、薬物療法など、症状や損傷の程度に合わせた適切な治療法を選択することが大切です。

肩の痛みや違和感を感じたら、無理をせず安静にし、必要に応じて医療機関を受診しましょう。
適切なケアと工夫で、肩の健康を守り、快適な日常生活を取り戻しましょう。

参考文献

  1. Swansen T, Wright MA, Murthi AM. “Postoperative Rehabilitation Following Rotator Cuff Repair.” Physical medicine and rehabilitation clinics of North America 34, no. 2 (2023): 357-364.
  2. Osborne JD, Gowda AL, Wiater B, Wiater JM. “Rotator cuff rehabilitation: current theories and practice.” The Physician and sportsmedicine 44, no. 1 (2016): 85-92.