はじめまして!院長の無藤 智之(むとう ともゆき)です。
肩の痛み、腕が上がらない、後ろに回せない…そんな悩みを抱えていませんか?
実はそれ、肩腱板損傷のサインかもしれません。肩腱板損傷は、肩関節の安定性と動きを司る重要な腱が損傷する疾患で、肩の痛みの中でも特に多く見られます。加齢やスポーツ、日常生活での動作など、様々な原因で発症し、放っておくと日常生活にも支障をきたすことも。
この記事では、肩腱板損傷の原因・症状・種類から、診断方法、治療法、リハビリテーション、そして予防法まで、整形外科専門医が詳しく解説します。
肩の痛みに別れを告げよう。肩の笑顔を取り戻す時です!!
肩腱板損傷とは?
肩の痛み、辛いですよね。腕を上げたり、後ろに回したりする時に痛む場合は、肩腱板損傷の可能性があります。肩腱板損傷は、肩関節の安定性と動きに関わる重要な部分の損傷です。肩関節の痛みの中でも特に多い疾患の一つです。この章では、肩腱板損傷について、構造、原因、症状、種類をわかりやすく解説していきます。
肩腱板の構造と機能
肩腱板は、肩甲骨(背中にある三角形の骨)から上腕骨頭(腕の骨の先端部分)につながる4つの筋肉(棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋)の腱が集まった部分です。
棘上筋は腕を外側に持ち上げる(外転)働き、棘下筋と小円筋は腕を外側に捻る(外旋)働き、肩甲下筋は腕を内側に捻る(内旋)働きを担っています。
これらの腱は、まるでゴムバンドのように肩関節を包み込み、肩関節を安定させる役割を担っています。肩関節は人体の中で最も可動域が広い関節である一方、構造的に不安定な関節です。そのため、肩腱板が機能することで初めて安定した動きが可能になるのです。
以前、大学生の野球チームでピッチャーをしている患者様を診察したことがあります。彼はボールを投げるたびに肩に痛みを感じていましたが、肩腱板の機能が低下していたことが原因でした。肩腱板がしっかりと機能していないと、肩関節が不安定になり、痛みを生じやすくなります。
肩腱板損傷の主な原因3つ
肩腱板損傷の主な原因は大きく分けて3つあります。
1つ目は、加齢による腱の老化です。
歳を重ねるにつれて、腱は弾力性を失い、切れやすくなります。まるで古くなった輪ゴムが切れやすくなるのと同じです。50歳以上の方に多く発症することから、五十肩と勘違いされることも少なくありません。
2つ目は、肩への強い衝撃です。
転んで肩を強打したり、スポーツで激しい接触プレーをしたりすると、肩腱板が損傷することがあります。例えば、ラグビーや柔道などのコンタクトスポーツで、肩に強い衝撃を受けた際に発症するケースを多く診てきました。
3つ目は、肩の使い過ぎです。
野球のピッチャーやバレーボールのアタッカーのように、繰り返し肩を使うスポーツや、重い荷物を持ち上げる作業など、肩に負担がかかる動作を続けると、肩腱板が損傷するリスクが高まります。特に、腕を頭上に上げて行う動作は肩腱板に大きな負担がかかります。
私は、長年工場で重労働に従事していた男性で、肩腱板損傷を発症した患者さんを診察したことがあります。彼は毎日重い部品を持ち上げていたので、肩に大きな負担がかかり、損傷に至ってしまったのです。

肩腱板損傷の主な症状5つ
肩腱板損傷の主な症状は以下の5つです。
- 肩の痛み:
特に、腕を上げたり、後ろに回したりする時に痛みを感じます。夜寝ている時に痛みで目が覚めることもあり、これは炎症が進行しているサインです。 - 肩の動きづらさ:
腕が上がりにくくなったり、肩を回すのが難しくなったりします。服を着替えたり、髪を洗ったりするといった日常生活動作にも支障が出る場合があります。 - 肩のこわばり:
肩が硬く感じ、スムーズに動かせない感覚があります。これは肩関節周囲の筋肉が緊張しているためです。 - 筋力低下:
腕の力が弱くなり、重い物が持てなくなったり、腕を上げるのがつらくなったりします。これは腱板の断裂により、肩関節の筋力が低下するためです。 - 音:
肩を動かすと、ゴリゴリといった音が鳴ることがあります。これは腱板が骨に擦れる音です。
これらの症状は、腱の損傷の程度によって様々です。軽度の損傷であれば、痛みや動きづらさも軽いことがありますが、重度の損傷になると、日常生活に支障が出るほどの激しい痛みや、腕を全く動かせなくなることもあります。

肩腱板損傷の種類(完全断裂・部分断裂など)
肩腱板損傷は、腱の断裂の程度によって、完全断裂と部分断裂の2種類に分けられます。
完全断裂は、腱が完全に切れてしまっている状態です。部分断裂は、腱の一部が切れている状態です。部分断裂はさらに、関節面断裂、腱内断裂、滑液包面断裂の3つに分類されます。これは断裂の位置によって分類されます。
肩腱板損傷の診断方法
肩腱板損傷かどうかを確かめる診断は、いくつかのステップを踏んで行います。適切な診断を受けることで、最適な治療方針が決まり、痛みの改善や日常生活の回復に繋がります。
診断の流れ
肩腱板損傷の診断は、患者さんとの対話から始まります。問診、身体診察、画像検査という3つのステップを経て、最終的な診断に至ります。まるで探偵が事件を解決するように、医師は患者さんの訴えや身体の状態から、痛みの原因を探っていきます。
- 問診: 患者さんのお話を丁寧に伺うことから診断は始まります。
「いつから痛み始めたのか」「どのような時に痛むのか」「どの程度痛むのか」「日常生活でどのような動作が困難か」など、詳しくお伺いします。
例えば、野球のピッチャーの方であれば、「ボールを投げるときに鋭い痛みを感じる」といった訴えが重要になります。
逆に、デスクワーク中心の方であれば、「パソコン作業中に肩が重だるくなる」といった訴えが診断の手がかりになります。さらに、夜間に痛みで目が覚める場合は、炎症が進行しているサインかもしれません。このように、患者さん一人ひとりの状況を把握することが、正確な診断の第一歩です。 身体診察: 次に、医師が患者さんの肩を直接触ったり、動かしたりして、肩の動きや痛み、筋力などを確認します。これは徒手検査と呼ばれ、問診で得られた情報をさらに具体的にしていくための重要なステップです。
例えば、腕を真横に上げてゆっくりと下ろしてもらう「ドロップアームテスト」では、肩腱板が損傷していると、腕をスムーズに下ろせなかったり、途中で腕が落ちてしまったりします。その他にも、特定の角度で抵抗を加えながら動かしてもらう検査など、様々な徒手検査を組み合わせて、肩腱板の状態を評価します。
- 画像検査: 問診と身体診察である程度の診断はできますが、損傷の程度や範囲を正確に把握するために、画像検査が必要になる場合があります。レントゲン検査、MRI検査、超音波検査などを用いて、肩関節の状態を詳細に調べます。
レントゲン検査: X線を使って骨の状態を撮影する検査です。肩腱板損傷は腱の異常であるため、レントゲン検査では直接的に損傷を確認することはできません。しかし、骨折や骨棘、関節リウマチなどの他の病気を除外するために重要な検査です。また、骨の状態を確認することで、肩関節の変形や不安定性の有無を評価することもできます。
- MRI検査: 磁場と電波を使って、身体の内部を詳細に画像化する検査です。
レントゲン検査ではわからない腱や筋肉、靭帯などの軟部組織の状態を鮮明に映し出すことができます。肩腱板損傷の診断においては、損傷の有無や程度、断裂の大きさ、周囲の組織の状態などを詳細に確認できるため、最も重要な検査と言えます。
超音波検査: 超音波を使って、リアルタイムで腱板の状態を観察する検査です。腱板の厚さや動き、断裂の有無などを確認できます。MRI検査に比べて費用が安く、手軽に検査できるというメリットがあります。しかし、MRI検査に比べると画像の精度は劣ります。

鑑別診断:四十肩・五十肩、石灰沈着性腱板炎など
肩の痛みは、肩腱板損傷以外にも様々な原因で起こり得ます。肩腱板損傷と似た症状を引き起こす病気もあるため、これらの病気と区別するための鑑別診断が重要です。
四十肩・五十肩(肩関節周囲炎): 40~50歳代に多く発症する、肩関節の周りの組織に炎症が起 こり、痛みや動きの制限が生じる病気です。肩腱板損傷との違いは、四十肩・五十肩では関節が硬くなり、動きが制限される「拘縮」が強くみられることです。夜間に痛みが強く、眠れないこともあります。
石灰沈着性腱板炎: 腱板にカルシウムの結晶(石灰)が沈着し、炎症を起こす病気です。強い痛みや肩の動きの制限が生じます。レントゲン検査で石灰の沈着を確認することで診断できます。
これらの病気は、肩腱板損傷とは治療法が異なるため、正しく鑑別することが重要です。文献にもあるように、運動療法は手術と同等の成功率を示すことが報告されていますが、症状の残存や再発の可能性もゼロではありません。そのため、自己判断で治療法を選択するのではなく、医師の診察を受け、適切な治療を受けることが大切です。
肩腱板損傷の治療法
肩の痛み、本当につらいですよね。肩腱板損傷と診断され、これからどうしたら良いのか不安でいっぱいだと思います。私も医師として、多くの患者さんの不安なお顔を見てきました。
肩腱板損傷の治療は、大きく分けて「保存療法」と「手術療法」の2種類があります。
どの治療法が適切かは、損傷の程度や症状、患者さんの年齢や生活スタイル、そしてご本人の希望によって異なります。
大切なことは、医師としっかり話し合い、ご自身の状況に合った治療法を選択することです。この章では、それぞれの治療法について、メリット・デメリットも含めて詳しく解説していきます。
保存療法:痛み止め薬、注射、リハビリテーション
保存療法は、手術をせずに肩腱板損傷を治療する方法です。
損傷の程度が軽度から中等度の場合や、高齢の方、手術を希望されない方、持病などで手術が難しい方に適しています。
主な治療法は、「痛み止め薬」「ブロック注射」「リハビリテーション」の3つです。
・痛み止め薬:炎症や痛みを抑える薬を服用します。ロキソニンなどの飲み薬や、湿布薬などがあります。
・注射:肩関節内にステロイド注射を行うことで、炎症や痛みを鎮めます。ステロイドは強力な抗炎症作用を持つ薬で、短期間で効果を発揮します。
また、ヒアルロン酸注射は、関節の動きを滑らかにし、痛みを和らげる効果があります。
例えば、30代男性のバスケットボール選手が、試合中に転倒して肩を痛めた際に、ヒアルロン酸注射とリハビリテーションを組み合わせることで、競技に復帰できたケースがありました。
・関節造影による授動術:肩関節の動きが制限された状態(拘縮)を改善する治療法です。
この方法では、造影剤を関節に注入して内部の状態を確認します。次に、その造影剤で関節の癒着を剥離し空間を広げ、広がった空間内で関節を他動的に動かして可動域を拡大する方法です。
・リハビリテーション:肩関節の柔軟性を高め、筋力を強化するための運動療法を行います。理学療法士の指導のもと、ストレッチや筋力トレーニングなど、一人ひとりの状態に合わせたプログラムを作成します。
保存療法は、手術に比べて身体への負担が少ないというメリットがありますが、効果が出るまでに時間がかかること、また、完全に痛みが取れない場合もあるというデメリットもあります。
適切な運動療法は、手術と同等の効果があるという研究結果も報告されています。しかし、症状が再発する可能性もゼロではありません。そのため、早期に適切な治療を受けることが重要です。
手術療法:鏡視下手術、直視下手術
保存療法で効果がない場合や、腱が完全に断裂している場合、スポーツへの復帰を目指している場合などは、手術療法が選択されます。
手術療法には、「鏡視下手術」と「直視下手術」の2種類があります。
・鏡視下手術:小さな穴を数カ所開け、カメラと細い手術器具を入れて行う手術です。傷口が小さいため、痛みが少なく、回復も早いというメリットがあります。まるで内視鏡検査のように、小さなカメラで肩の中を見ながら手術を行うので、周りの組織へのダメージも最小限に抑えられます。
以前、20代の野球選手が、肩腱板損傷で鏡視下手術を受け、数ヶ月後には競技に復帰できたケースがありました。
・直視下手術:肩を切開して行う手術です。鏡視下手術に比べて傷口は大きくなりますが、腱の修復をしっかり行うことができます。広い視野を確保できるため、複雑な損傷の場合や、再手術の場合などに適しています。
私は、恩師からはこちらの手術方法を長きに渡り指導していただきました。術後患者様の満足度 は約5000例のうち約9割と非常に良好でした。

手術のメリット・デメリット、合併症のリスク
手術療法は、損傷した腱を直接修復できるという大きなメリットがありますが、デメリットや合併症のリスクも存在します。医師からしっかりと説明を受け、理解した上で手術を受けるかどうかを判断しましょう。
メリット:断裂した腱を修復することで、肩の痛みや動きの制限を改善できる可能性があります。スポーツや仕事への復帰も期待できます。特に、完全断裂の場合や、保存療法で効果がない場合は、手術が有効な治療法となることが多いです。
デメリット:手術に伴う痛みや腫れ、傷跡が残る可能性があります。また、入院が長期必要な場合もあります。日常生活への復帰にも時間を要することがあります。
合併症のリスク:感染や出血、神経損傷、肩関節の拘縮(かたくなること)、再断裂などの可能性があります。これらの合併症はまれですが、可能性があることを理解しておくことが重要です。
合併症のリスクは、手術の方法や患者さんの状態によって異なります。医師とよく相談し、メリットとデメリット、合併症のリスクを理解した上で、納得して手術を受けることが大切です。
治療期間の目安
肩腱板損傷の治療期間は、損傷の程度や治療法、患者さんの年齢や回復力、生活スタイルによって大きく異なります。
保存療法の場合:数ヶ月から1年以上かかることもあります。痛みが軽快しても、再発を防ぐため、リハビリテーションは継続して行うことが大切です。焦らず、じっくりと時間をかけて治療に取り組むことが重要です。
文献にもあるように、保存療法である運動療法は、手術と同程度の効果があるという研究結果も報告されています。しかし、すべての患者さんに同じ効果が得られるとは限りません。
手術療法の場合:術後数ヶ月で、日常生活に支障のない程度まで回復することが多いです。ただし、スポーツや仕事への復帰には、さらに時間がかかる場合もあります。手術の種類によっても治療期間は異なります。治療期間中は、医師や理学療法士の指示に従い、無理をせずに治療に専念しましょう. 焦りは禁物です。
肩腱板損傷のリハビリテーション
肩腱板損傷からの回復を目指す上で、リハビリテーションは重要な役割を果たします。適切なリハビリテーションを行うことで、肩の痛みを和らげ、動きをスムーズにし、日常生活を快適に送れるようにサポートします。焦らず、じっくりと取り組んでいきましょう。
リハビリテーションの目的と内容
リハビリテーションの大きな目的は、肩の機能を回復させ、痛みを軽減し、日常生活動作を改善することです。肩関節の動きをよくし、筋力を強化することで、損傷した腱への負担を軽減し、日常生活での活動性を高めることができます。
リハビリテーションの内容は、損傷の程度や症状、回復状況、手術の有無などによって異なりますが、大きく分けて「可動域訓練」「筋力強化訓練」「日常生活動作訓練」の3つに分類されます。
可動域訓練は、肩関節の動きをスムーズにするための訓練です。肩関節周囲の筋肉や組織の柔軟性を高め、関節の動きを改善します。
例えば、振り子運動や滑車運動、ストレッチなどがあります。私は、患者さんの状態に合わせて、無理のない範囲で運動を行っていただくよう指導しています。
筋力強化訓練は、肩関節を支える筋肉を強化するための訓練です。肩腱板の損傷により弱くなった筋肉を鍛えることで、肩関節の安定性を高め、再発を予防します。
例えば、ゴムチューブや軽いダンベルを使ったトレーニングなどがあります。重すぎる負荷をかけると逆効果になるため、患者さんの筋力に合わせた適切な負荷設定が重要です。
日常生活動作訓練は、日常生活で必要な動作をスムーズに行えるようにするための訓練です。着替えや洗髪、食事など、日常生活で実際に行う動作を練習することで、肩への負担を軽減し、機能回復を促進します。
以前、テニスのサーブで肩を痛めた40代男性を診察したことがあります。彼は、リハビリテーションとして、可動域訓練、筋力強化訓練、日常生活動作訓練を段階的に行い、3ヶ月後には痛みなくテニスに復帰することができました。

肩腱板損傷の予防と日常生活の注意点
肩の痛みは、日常生活に大きな支障をきたしますよね。
肩の痛みを予防し、健康な肩を保つためには、日常生活での適切なケアが大切です。
この章では、肩腱板損傷の予防法と、日常生活で注意すべき点について、具体例を交えながらわかりやすく解説します。肩の健康を維持するための生活習慣についてもご紹介しますので、ぜひ参考にして、快適な毎日を送れるように一緒に考えていきましょう。
肩腱板損傷の予防法
肩腱板損傷を予防するためには、肩まわりの筋肉をバランスよく鍛え、柔軟性を保つことが重要です。
肩甲骨体操: 肩甲骨を上下、左右、前回し/後ろ回しすることで、肩甲骨まわりの筋肉をほぐし、柔軟性を高めます。肩甲骨を意識的に動かすことがポイントです。私は、患者さんには、両手を肩に置き、肘で大きな円を描くように前回しと後ろ回しをそれぞれ10回ずつ行うよう指導しています。
チューブトレーニング: ゴムチューブを使ったトレーニングは、手軽に肩まわりの筋肉を鍛えることができます。インナーマッスル(深層筋)を鍛えることで、肩関節の安定性を高め、損傷の予防につながります。高齢者の方や、筋力に自信のない方は、チューブの強度を弱めにする、あるいは回数を減らすなど、ご自身の状態に合わせて調整することが大切です。
ストレッチ: 肩まわりの筋肉をストレッチすることで、筋肉の緊張をほぐし、血行を促進します。肩こりや肩の痛みの予防にも効果的です。お風呂上がりなど、体が温まっている時に行うとより効果的です。私は、患者さんには、腕を前に伸ばし、反対の手で肘を抱え込むようにして胸に引き寄せるストレッチを指導しています。このストレッチは、肩甲骨の間の筋肉を効果的に伸ばすことができます。
ウォーミングアップとクールダウン: スポーツや運動の前後には、必ずウォーミングアップとクールダウンを行いましょう。急な運動は筋肉や腱を傷つけやすく、肩腱板損傷の原因となります。準備運動で肩まわりの筋肉を温め、運動後はストレッチで筋肉をほぐすことで、損傷の予防になります。ウォーミングアップとしては、肩を回したり、腕を振ったりする軽い運動が効果的です。クーリングダウンとしては、ストレッチが効果的です。
例えば、野球のピッチャーのように、ボールを投げる動作を繰り返すスポーツでは、肩への負担が大きいため、特に注意が必要です。投球フォームの見直しや、適切なトレーニングを行うことで、肩腱板損傷のリスクを減らすことができます。若い頃から、肩への負担を意識した生活を送ることが、将来の肩の健康につながります。
日常生活での注意点:姿勢、運動、睡眠など
日常生活では、次のような点に注意することで、肩腱板損傷の予防につながります。
姿勢: 正しい姿勢を保つことは、肩への負担を軽減するために非常に重要です。猫背にならないように気をつけ、デスクワークの際は、椅子に深く腰掛け、背筋を伸ばしましょう。パソコンの画面は目の高さに合わせ、キーボードとマウスは体に近い位置に置くことで、肩への負担を軽減できます。長時間のデスクワークは、肩こりの原因にもなります。1時間に1回程度は休憩を挟み、軽いストレッチを行うなどして、肩の負担を軽減しましょう。
運動: 激しい運動や、急に重いものを持ち上げることは、肩に大きな負担をかけます。無理な動作は避け、徐々に負荷を上げていくようにしましょう。重い荷物を持つ際は、両肩に均等に重さが分散するように、リュックサックを使用するのも良い方法です。
私は、患者さんには、ウォーキングや水泳など、肩に負担の少ない有酸素運動を勧めています。
睡眠: 睡眠中は、肩を冷やさないように注意しましょう。冷えは血行不良を招き、肩の痛みやこりの原因となります。冬場は暖かい寝巻きを着たり、毛布をかけるなどして、肩を冷えから守りましょう。また、痛い肩の下に低い枕を入れて睡眠するのも、おすすめしています。
バランスの取れた食事: タンパク質、ビタミン、ミネラルなど、バランスの良い食事を摂ることは、健康な体を作る上で欠かせません。特に、コラーゲンは腱の主成分であるため、積極的に摂取するようにしましょう。コラーゲンが多く含まれる食品には、鶏肉、魚、豚足などがあります。偏った食事は、栄養不足を引き起こし、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
ストレス軽減: ストレスは、肩こりや痛みの原因となることがあります。趣味を楽しんだり、リラックスできる時間を作るなど、ストレスを軽減する方法を見つけましょう。過度なストレスは、心身の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
これらの生活習慣を心がけることで、肩の健康を維持し、肩腱板損傷などのトラブルを予防することができます。健康な肩を維持するためには、日頃からの心がけが大切です。

まとめ
肩の痛みや動きの制限、つらいですよね。この記事では、肩腱板損傷について、原因や症状、診断方法から治療法、リハビリテーション、そして予防法まで、幅広く解説しました。
肩腱板損傷は、加齢やスポーツ、日常生活での動作など、様々な原因で起こり得る身近な疾患です。早期発見・早期治療が重要ですので、肩に違和感や痛みを感じたら、自己判断せずに、医師に相談してください。
適切な治療とリハビリテーションを行うことで、多くの場合、症状は改善し、日常生活への復帰も可能です。肩の痛みを我慢せずに、専門家のサポートを受けて、快適な日常生活を取り戻しましょう。そして、日頃から肩のケアを意識し、健康な肩を維持していくことが大切です。
これからも皆様の健康をサポートする有益な情報を、継続的にお届けしてまいります。さくは整形外科のブログが、皆様の健康維持と増進に少しでもお役立ていただければ幸いです。
最後に、私は肩関節に関わる専門家として長年診療研究をし続けてきた中で、この分野には特別な思いがありました。
「腱板」という言葉は、私の恩師であった故・信原克哉先生が提唱したものとされています。
私は恩師から腱板について深い知識と哲学を学ばさせていただきました。その恩師の想いを受け継ぎたいという気持ちから、このテーマをブログのスタートに選びました。
