2025.1.17 Fri. 腰椎分離症でやってはいけないこと|スポーツ復帰までの注意点 スポーツ 腰 腰椎分離症は、脊椎の骨の一部に亀裂が入る病気で、悪化すると日常生活にも支障をきたすことがあります。若年層のスポーツ障害として注目されており、特に反復的な腰椎過伸展を伴うスポーツで発症リスクが高まると言われています。この記事では、腰椎分離症でやってはいけないこと5選と、スポーツ復帰までの注意点、症状を和らげる方法を具体例を交えて解説します。快適な日常生活とスポーツ復帰を目指すために、ぜひ参考にしてみてください。 目次1 腰椎分離症でやってはいけないこと5選1.1 前かがみの姿勢を長時間続ける1.2 重いものを持ち上げる1.3 激しいスポーツをする1.4 長時間同じ姿勢を続ける1.5 体をひねる運動をする2 腰椎分離症の症状を和らげる方法2.1 コルセットを着用する2.2 薬物療法を受ける2.3 理学療法を受ける2.4 痛みがある場合は安静にする2.5 ストレッチや体操を行う3 腰椎分離症のスポーツ復帰までの注意点3.1 痛みが完全に消失してから復帰する3.2 徐々に運動強度を上げていく3.3 再発予防のトレーニングを行う3.4 定期的に医師の診察を受ける4 まとめ5 参考文献 腰椎分離症でやってはいけないこと5選 前かがみの姿勢を長時間続ける 前かがみの姿勢は、腰椎分離症が起こりやすい第5腰椎に大きな負担をかけます。脊椎に負担がかかり続けると、分離部に炎症が生じ、痛みが悪化することがあります。 例えば、長時間のパソコン作業や、台所で洗い物をするときの中腰姿勢、子どもと床で遊ぶ時の姿勢、靴紐を結ぶときなどは、腰椎に負担がかかりやすいので注意が必要です。 重いものを持ち上げる 重いものを持ち上げると、腰椎分離部に瞬間的に大きな力が加わります。繰り返し重いものを持ち上げると、分離部の炎症が悪化し、痛みが強くなる可能性があります。 例えば、スーパーの買い物袋や洗濯かご、お米の袋などを持ち上げる動作は、腰椎に大きな負担をかけます。また、筋トレでダンベルを持ち上げたり、幼児やペットを抱っこする際も注意が必要です。 激しいスポーツをする 激しいスポーツは、腰椎に繰り返し衝撃を与え、分離部にストレスを与え続けます。スポーツの種類によっては、腰をひねる動作やジャンプなど、腰椎への負担がさらに大きくなるものもあります。腰椎分離症の痛みを悪化させたり、治癒を遅らせたりする原因となるため、注意が必要です。 特に、ジャンプやランニングを伴うバスケットボール、バレーボール、陸上競技などは、分離部に大きな衝撃が加わるため、症状を悪化させる可能性があります。また、ラグビー、柔道、レスリングなどの腰に負担がかかるコンタクトスポーツも避けるべきです。 長時間同じ姿勢を続ける 長時間同じ姿勢を続けると、特定の筋肉や関節に負担が集中し、腰椎分離症の痛みを悪化させる可能性があります。デスクワークや車の運転、立ち仕事など、長時間同じ姿勢を続ける場合は、こまめに休憩を取り、軽いストレッチや体操をする、姿勢を変えるなど工夫してみましょう。 体をひねる運動をする 体をひねる運動は、腰椎に捻じれのストレスを与え、分離した骨への負担を増加させます。ゴルフや野球のスイング、テニスのストローク、バドミントンのスマッシュのような、急激に体をひねる動作は避けましょう。 腰椎分離症の症状を和らげる方法 腰椎分離症になると、腰に痛みを感じたり、スポーツができなくなったりして、不安になりますよね。一日でも早く治して、元の生活に戻りたいと願うのは当然のことです。 ここでは、腰椎分離症の症状を和らげる方法を、紹介します。これらの方法は、痛みの軽減だけでなく、再発予防にもつながります。しっかりと理解して、治療に前向きに取り組んでいきましょう。 コルセットを着用する コルセットは、腰を支えて、分離した骨への負担を軽減する「腰のサポーター」です。コルセットを着用することで、痛みをやわらげ、分離した骨がしっかりくっつくようにサポートする効果が期待できます。 例えば、ぎっくり腰になった際にコルセットを着けると、腰が安定して痛みがやわらぎます。腰椎分離症の場合も同様に、コルセットを着用することで痛みをやわらげることができます。 私の患者さんの中にも、コルセット着用によって痛みが軽減した方がたくさんいらっしゃいます。特に、スポーツをしている学生さんは、コルセットを着けることで練習に復帰できる場合もあります。 痛みがなくなっても、医師の指示に従って、決められた期間はコルセットを着け続けることが大切です。自己判断でコルセットを外してしまうと、再発のリスクが高まります。 薬物療法を受ける 腰椎分離症の痛みをやわらげるには、薬物療法も有効です。よく使われるのは、痛み止めや炎症を抑える薬です。これらの薬は、痛みや炎症といった症状をやわらげる効果があります。 理学療法を受ける 理学療法では、専門の理学療法士が、個々の状態に合った運動やストレッチを指導します。これらの運動やストレッチは、腰の筋肉を鍛え、柔軟性を高める効果があります。 例えば、腰痛体操を行うことで、腰椎分離症の症状を改善できる場合があります。理学療法では、腰痛体操をはじめ、さまざまな運動やストレッチを指導しています。 痛みがある場合は安静にする 腰椎分離症で最も重要なのは「安静」です。痛みが強いときは、腰を休ませることが何よりも大切です。無理に動くと、分離した骨に負担がかかり、症状が悪化してしまうことがあります。 これは、怪我をした足を無理に歩くと、さらに悪化してしまうのと同じです。腰椎分離症も同様に、痛みがあるときは安静にすることが重要です。安静にすることで、痛みをやわらげ、治癒を早めることができます。 多くの場合、安静にすることで自然治癒することもあります。特に、成長期の子供は治癒力が高いため、安静とコルセット着用で改善するケースが多いです。 ストレッチや体操を行う 腰椎分離症の症状が落ち着いてきたら、ストレッチや体操で腰まわりの筋肉を鍛え、柔軟性を高めることが重要です。これらの運動は、腰椎分離症の再発予防に効果的です。 ただし、腰をひねったり、反らしたりする運動は、症状を悪化させる可能性があるので避けましょう。適切なストレッチや体操については、医師や理学療法士に相談してください。 腰椎分離症のスポーツ復帰までの注意点 スポーツへの復帰は、腰椎分離症の患者さんにとって大きな目標の一つです。 しかし、焦りは禁物です。 適切な手順を踏まないと再発のリスクが高まり、より辛い思いをすることになりかねません。 万全の状態で復帰できるよう、腰椎分離症からのスポーツ復帰について詳しく解説します。 痛みが完全に消失してから復帰する 痛みがなくなったからといって、すぐにスポーツに復帰するのは大変危険です。 痛みが消失しても骨が完全に治癒していない可能性があるからです。 腰椎分離症は、背骨の一部に亀裂が入る、いわば骨折のようなもの。 痛みが引いても、亀裂は残っているかもしれません。 例えば、骨折した腕のギプスを医師の許可なく勝手に外してしまうと、骨が再び折れてしまう危険性があります。腰椎分離症も同様で、痛みがなくても医師の許可が出るまではスポーツは控えましょう。私の経験では、痛みが消えてから1‐2週間は様子を見ることをお勧めしています。 徐々に運動強度を上げていく スポーツ復帰の許可が出ても、いきなり以前と同じ強度の運動をするのは避けましょう。 まずはウォーキングや軽いジョギングから始め、徐々に強度を上げていくことが大切です。例えば、ランニングであれば、最初は短い距離や時間から始め、徐々に距離や時間を延ばしていくなど、段階的に運動強度を上げていくようにします。 焦らず、無理のない範囲で運動を行いましょう。 復帰直後は、運動後に痛みや違和感がないかを確認することも重要です。 再発予防のトレーニングを行う 腰椎分離症は再発しやすい病気です。 再発を防ぐためには、体幹を鍛えるトレーニングが効果的です。 体幹を鍛えることで腰への負担を軽減し、再発のリスクを下げることができます。 プランクや腹筋、背筋などのトレーニングは体幹強化に有効ですが、これらのトレーニングは専門家の指導のもと、正しいフォームで行うようにしましょう。 間違ったフォームで行うと、かえって腰に負担がかかり、症状を悪化させる可能性があります。 定期的に医師の診察を受ける スポーツ復帰後も、定期的に医師の診察を受け、経過観察をすることが大切です。 再発の兆候がないか、医師にチェックしてもらいましょう。 何か気になる症状があれば、すぐに医師に相談することが重要です。 早期発見、早期治療が、腰椎分離症の悪化を防ぐ鍵となります。 まとめ 腰椎分離症でやってはいけないこと、日常生活での注意点、スポーツ復帰までの注意点について解説しました。腰椎分離症は、安静にしていれば自然に治ることも多いですが、間違った動きや姿勢を続けると、治りが遅くなったり、痛みがひどくなったりする可能性があります。 前かがみの姿勢や重いものを持ち上げるのは避け、激しいスポーツも控えましょう。コルセットの着用や薬物療法、理学療法なども有効です。 スポーツ復帰は医師の指示に従い、痛みが完全に消失してから、徐々に運動強度を上げていくことが大切です。 再発予防のトレーニングや定期的な医師の診察も忘れずに行いましょう。焦らず、無理なく、元の生活に戻れるよう、一歩ずつ進んでいきましょう。 参考文献 Mohile NV, Kuczmarski AS, Lee D, Warburton C, Rakoczy K, Butler AJ. Spondylolysis and Isthmic Spondylolisthesis: A Guide to Diagnosis and Management. Journal of the American Board of Family Medicine 35, no. 6 (2022): 1204-1216. むとう整形外科・MRIクリニック