「魔女の一撃」と恐れられるぎっくり腰。くしゃみやちょっとした動作で激痛が走り、日常生活を困難にする厄介な症状です。安静にしていれば回復することも多いですが、適切な処置を怠ると慢性化し、再発を繰り返す可能性もあります。
アメリカ理学療法士協会(APTA)のガイドラインに基づく「やってはいけないNG行動」があることをご存知ですか?この記事では、ぎっくり腰になった際に避けるべき5つのNG行動と、効果的な応急処置、そして再発を防ぐための対策を詳しく解説します。
目次
NG行動5選
ぎっくり腰になった際にやってはいけないNG行動を5つご紹介します。
前かがみの姿勢は避ける
前かがみの姿勢は、腰に大きな負担がかかります。例えば、スーパーの買い物カゴを床に置いた状態から持ち上げようとするとき、つい前かがみになってしまいがちです。また、小さなお子さんを抱き上げようとする際にも、咄嗟に前かがみの姿勢をとってしまう方が多いです。これらは腰痛を悪化させる可能性があります。前かがみになる必要がある場合は、膝を曲げて腰を落とすようにしてください。
重いものを持ち上げない
ぎっくり腰になっているときは、重いものを持ち上げるのは絶対に避けましょう。
普段は簡単に持ち上げられるものでも、ぎっくり腰の時は腰椎に大きな負担がかかり、症状を悪化させる可能性があります。
長時間同じ姿勢でいない
デスクワークや車の運転など、長時間同じ姿勢でいると、腰回りの血流が悪化し、炎症の回復が遅れる可能性があります。特にデスクワーク時は、パソコン画面に集中するあまり、長時間同じ姿勢で作業を続けてしまう方が多く見られます。20分に一度は席を立つ、軽いストレッチをする、立って作業をする時間を作るなど、こまめな姿勢の変更を心がけましょう。
急な動きや激しい運動はしない
ぎっくり腰になった直後は、腰椎周辺の筋肉や靭帯が炎症を起こしている状態です。
急な動きや激しい運動は、患部をさらに傷つけ、炎症を悪化させる可能性があります。例えば、スポーツや激しい労働も当然避けるべきです。安静を第一に考え、激しい運動は避けましょう。痛みが落ち着いてきたら、医師や理学療法士の指導のもと、徐々に運動を再開していくことが大切です。
温めたりマッサージしたりしない
ぎっくり腰の初期段階では、患部が炎症を起こしているため、温めたりマッサージしたりするのは逆効果です。温めると炎症が悪化し、痛みが増す可能性があります。入浴も熱いお湯に長時間浸かるのは避け、ぬるめのお湯に短時間浸かるようにしましょう。マッサージも同様で、炎症が治まっていない状態でマッサージを行うと、組織を損傷するリスクがあります。

ぎっくり腰の応急処置4選
安静にする
ぎっくり腰になったら、まずは安静が重要です。安静で、炎症の悪化を防ぎ、痛みが落ち着くのを待つことができます。横になるのが理想ですが、難しい場合は楽な姿勢で座ったり、壁にもたれたりしても構いません。無理に動くと症状が悪化することがあるので、注意が必要です。
冷やす
炎症を抑えるために、患部を冷やすのも効果的です。氷水を入れた袋や保冷剤をタオルで包み、腰に当てて15~20分冷やしましょう。これを数時間おきに繰り返します。冷やすことで、痛みや腫れが和らぎ、炎症の広がりを抑えることができます。
薬を服用する
痛みが強い場合は、市販の痛み止め薬を服用するのも有効な手段です。アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの成分が含まれた薬は、痛みや炎症を和らげるのに役立ちます。
痛みがなかなか治まらない場合は、自己判断で薬を飲み続けるのではなく、医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。
コルセットを着用する
コルセット着用で、腰を安定させ、痛みを軽減できます。コルセットを選ぶ際は、自分の腰に合ったサイズを選び、締め付けすぎないように注意しましょう。締め付けすぎると、かえって痛みが増してしまうことがあります。コルセットはあくまで一時的な処置であり、痛みが和らげば、徐々にコルセットを外し、腰周りの筋肉を鍛えましょう。長期間コルセットに頼り続けると、腰周りの筋肉が弱くなり、再発のリスクを高める可能性があります。
再発予防対策3選
ぎっくり腰は再発しやすい症状です。一度ぎっくり腰を経験すると、何度も繰り返すという方も少なくありません。私の患者さんの中にも、年に数回ぎっくり腰で来院される方がいます。再発を予防するためには、日頃から腰に負担をかけない生活習慣を送り、腰周りの筋肉を鍛えることが重要です。
適度な運動をする
適度な運動は、腰痛の再発予防に効果的です。特にウォーキングや水泳などの有酸素運動は、腰への負担が少なく、おすすめです。1回30分程度、週に3回以上を目安に行いましょう。
また、腰痛体操などの腰周りの筋肉を鍛える運動も効果的です。
研究によると、ピラティスやエアロビクス、筋力トレーニングなども腰痛に効果があると示唆されています。ピラティスは、体幹の筋肉を強化するのに効果的なエクササイズです。エアロビクスは、全身の持久力を高めるのに効果的です。筋力トレーニングは、特定の筋肉群を強化するのに効果的です。ご自身の体力や好みに合わせて、無理なく続けられる運動を見つけましょう。
ストレッチをする
ストレッチは、筋肉の柔軟性を高め、血行を促進する効果があります。ぎっくり腰の再発予防には、腰や背中、太もものストレッチが効果的です。
例えば、床に仰向けになり両膝を抱え込むストレッチがあります。これらのストレッチは、1回20~30秒程度、1日に数回行うと良いでしょう。ストレッチを行う際は、呼吸を止めずにゆっくりと行うことが大切です。痛みを感じる場合は、無理に伸ばさず、痛みのない範囲で行ってください。
正しい姿勢を保つ
正しい姿勢を保つことは、ぎっくり腰の再発予防に非常に重要です。立っている時は、背筋を伸ばし、お腹に力を入れるように意識しましょう。座っている時は、浅く座らず、背もたれに寄りかかり、腰を支えるようにしましょう。
まとめ
ぎっくり腰の予防と対策について解説しました。再発を防ぐためには、日頃のケアが重要です。
ぎっくり腰になったら、まずは安静にし、患部を冷やしましょう。痛み止めを服用したり、コルセットを着用するのも有効です。温めたり、マッサージしたりするのは逆効果なので避けましょう。
再発予防には、適度な運動、ストレッチ、正しい姿勢を維持することが大切です。
ウォーキングや水泳などの有酸素運動に加え、腰痛体操で腰周りの筋肉を鍛えるのも効果的です。ストレッチは、筋肉の柔軟性を高め、血行を促進します。正しい姿勢を保つことで、腰への負担を軽減できます。
これらの対策を参考に、ぎっくり腰になりにくい体づくりを心がけましょう。
参考文献
- George SZ, Fritz JM, Silfies SP, Schneider MJ, Beneciuk JM, Lentz TA, Gilliam JR, Hendren S and Norman KS. “Interventions for the Management of Acute and Chronic Low Back Pain: Revision 2021.” The Journal of orthopaedic and sports physical therapy 51, no. 11 (2021): CPG1-CPG60.
- Owen PJ, Miller CT, Mundell NL, Verswijveren SJJM, Tagliaferri SD, Brisby H, Bowe SJ and Belavy DL. “Which specific modes of exercise training are most effective for treating low back pain? Network meta-analysis.” British journal of sports medicine 54, no. 21 (2020): 1279-1287