【整形外科医監修】腰痛を抱えている方の寝具選びから就寝姿勢まで解説

腰痛に悩んでいませんか? 腰痛は、日本人にとって非常に身近な症状であり、国民の約8割が生涯に一度は経験すると言われています。しかし、その原因は様々で、放置すると日常生活に深刻な支障をきたすことも。

この記事では、腰痛の方の正しい寝姿勢から、最適なマットレスや枕の選び方、そして効果的なストレッチまで、具体的な方法を画像と共に丁寧に解説。 仕事や家事での腰痛対策についても、具体的なアドバイスを提供します。 この記事で、快適な生活を取り戻すための第一歩を踏み出してください。

腰痛の種類

腰痛は、その原因や症状、経過によって様々な種類に分けられます。

  • 急性腰痛: 突然激しい痛みが起こる腰痛で、重いものを持ち上げた時やくしゃみをした時など、何気ない動作がきっかけで起こることが多いです。
  • 慢性腰痛: 3ヶ月以上続く腰痛で、原因が特定できない場合もあります。急性腰痛を繰り返すうちに慢性化することもあります。
  • 神経症状を伴う腰痛: 神経の圧迫や損傷によって引き起こされる腰痛で、しびれや痛みを伴うことがあります。椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などが原因となることが多いです。

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腰痛に効果的な寝る姿勢と寝具選び

仰向け・横向き・うつ伏せ、それぞれの正しい寝る姿勢

  • 仰向け:仰向けで寝る場合は、膝の下にクッションや枕を置き、膝を軽く曲げることで腰への負担を軽減できます。この姿勢は、背骨の自然なS字カーブを維持するのに役立ち、腰椎への負担を最小限に抑えることができます。

  • 横向き:横向きで寝る場合は、両膝を軽く曲げ、抱き枕やクッションを膝の間に挟むと、骨盤や股関節の歪みを防ぎ、腰への負担を軽減できます。特に、妊娠中の方や股関節に痛みのある方におすすめです。

  • うつ伏せ:うつ伏せは、腰を反らせるため、腰痛を悪化させる可能性があります。どうしてもこの姿勢で寝る必要がある場合は、お腹の下に薄いクッションを敷き、腰へのアーチを軽減することで、腰への負担を最小限にしましょう。長時間うつ伏せで寝ることは避け、可能であれば仰向けまたは横向きで寝るように心がけてください。

腰痛におすすめのマットレスと枕の選び方

マットレス選びで重要なのは、体の沈み込み具合です。軟らかすぎるマットレスは、体が沈み込みすぎてしまい、腰を支えられず、かえって腰痛を悪化させる可能性があります。
逆に、硬すぎるマットレスは、体圧が一点に集中し、特定の部位に負担がかかりやすいため、これもまた腰痛の原因となることがあります。適度な硬さで、体圧を分散してくれるマットレスを選ぶことが重要です。

枕は、高すぎても低すぎても首や肩に負担がかかり、その結果、腰痛につながることがあります。
仰向けで寝たときに、首の骨が自然なS字カーブを維持できる高さを目安に選びましょう。
購入前に試して、確認できれば良いですが、市販品では難しいです。購入後に中の素材の量を増減し、枕の高さを調整できるタイプだと安心です。
横向きで寝る場合は、肩幅に合わせて、仰向けで寝る時よりも少し高めの枕がおすすめです。

寝具選びで迷った場合は、整形外科専門医に相談することをおすすめします。当院では、これら以外にも患者さんの症状や生活習慣、身体の特性に合わせて、適切な寝具選びのアドバイスを提供することができます。

腰痛管理のための生活習慣と運動法

予防するためのストレッチ

ここでは、おすすめする効果的なストレッチを3つご紹介します。

  • ハムストリングスのストレッチ: 椅子に浅く腰掛け、片方の足を伸ばし、つま先を天井に向けます。伸ばした足の大腿後面(太ももの裏側)に軽い痛みを感じる程度まで、ゆっくりと上体を前に倒します。息を止めずに、数回深呼吸をしながら、10~30秒程度ストレッチを続けましょう。反対側の足も同様に行います。ハムストリングスは、骨盤と膝関節をつなぐ筋肉で、この筋肉が硬くなると、骨盤が後傾し、腰椎の湾曲が大きくなり、腰痛の原因となることがあります。

  • 腸腰筋のストレッチ: 片方の足を大きく前に出し、後ろ足の膝を床につけます。前の足に体重をかけ、後ろ足の付け根にストレッチ感を感じるまで腰を前に押し出します。息を止めずに、10~30秒程度キープします。反対側の足も同様に行います。腸腰筋は、腰椎と大腿骨をつなぐ筋肉で、この筋肉が硬くなると、腰椎の前弯(腰が反ること)が増強し、腰痛を引き起こすことがあります。

  • 梨状筋のストレッチ: 仰向けに寝て、両膝を曲げます。片方の足首をもう一方の膝の上に乗せ、両手で太もも裏を抱え、胸の方へゆっくりと引き寄せます。お尻の奥にストレッチ感を感じます。10~30秒程度キープし、反対側の足も同様に行います。梨状筋は、骨盤の深部に位置する筋肉で、この筋肉が硬くなると、坐骨神経を圧迫し、腰痛や坐骨神経痛の原因となることがあります。

仕事や家事でできる腰痛対策のポイント

  • 正しい姿勢を保つ: デスクワークでは、椅子に深く座り、背筋を伸ばし、足を床につけます。パソコンのモニターは、目線と同じ高さか、やや下に設置しましょう。立ち仕事では、背筋を伸ばし、お腹に力を入れて、骨盤を立てるように意識します。

  • こまめな休憩: 長時間同じ姿勢を続けないように、30分~1時間ごとに休憩を取り、前の項に記載した軽いストレッチや体操を行いましょう。同じ姿勢を長時間続けると、筋肉が緊張し、血行が悪くなり、腰痛を引き起こしやすくなります。

  • 重いものを持ち上げる際は、膝を曲げる: 腰を曲げて持ち上げるのではなく、膝を曲げ、背中をまっすぐにして持ち上げます。重いものを持ち上げる際は、できるだけ体に近づけて持ち上げ、急な動作を避けましょう。

まとめ

腰痛でお悩みの方、この記事では腰痛の正しい寝姿勢、寝具選び、そして日々の生活習慣まで、詳しく解説しました。
様々な原因が考えられる腰痛ですが、適切な姿勢や寝具選び、そしてストレッチを取り入れることで、症状の改善や予防に繋がる可能性があります。
仰向け寝、横向き寝、うつ伏せ寝それぞれの正しい姿勢や、マットレス・枕選びのポイントも理解できたでしょうか? すぐに実践できるストレッチも紹介しているので、今日から試してみて下さい。

それでも改善が見られない、または強い痛みがある場合は、我慢せずに整形外科医への受診をおすすめします。専門医による的確な診断と治療が、あなたの腰痛改善への近道となります。 快適な睡眠と健康的な毎日を取り戻しましょう。

参考文献

Knezevic NN, Candido KD, Vlaeyen JWS, Van Zundert J, Cohen SP. “Low back pain.” Lancet 398, no. 10294 (2021): 78-92.