2025.8.16 Sat. バスケットボールで起こる怪我。専門医が原因から治療法まで解説 スポーツ この記事では、バスケットボールで起こりやすい怪我の種類、原因、予防策、そして怪我後の対処法まで、専門医の視点から分かりやすく解説します。足首の捻挫から骨折、肉離れ、靭帯損傷まで、具体的な症状や治療法を知り、安全にバスケットボールを楽しむための知識を身につけてみませんか? 目次1 バスケットボールで起こりやすい怪我の種類4選1.1 足関節捻挫:症状と応急処置1.2 前十字靭帯損傷:診断と治療法1.3 肉離れ(ハムストリング、内転筋など):重症度とリハビリ1.4 骨折(手指、足趾など):固定期間と後遺症2 怪我の原因と予防策5選2.1 危険なプレーとポジション別のリスク2.2 シューズやサポーターの選び方2.3 ウォーミングアップとクールダウンの重要性3 怪我後の適切な対処法と復帰までの流れ3.1 医療機関の選び方:専門医の探し方3.2 治療方法:保存療法と手術療法3.3 リハビリテーション:段階的な復帰プラン3.4 再発防止:日常生活での注意点4 まとめ5 参考文献 バスケットボールで起こりやすい怪我の種類4選 バスケットボールは、ジャンプや急な方向転換、選手同士の接触など、身体への負荷が大きいスポーツです。だからこそ、怪我のリスクも高く、適切な予防策や迅速な対処が重要になります。今回は、整形外科専門医の立場から、バスケットボールで特に起こりやすい怪我を4つ解説します。 足関節捻挫:症状と応急処置 足関節捻挫は、バスケットボールで最も頻度の高い怪我の一つです。着地時や急な方向転換で足首をひねり、関節を支える靭帯が損傷することで起こります。 症状: 捻挫の程度によって症状は異なります。 軽度:じんわりとした痛み、軽い腫れ。歩行は可能。 中等度:強い痛み、明らかな腫れ、内出血。歩行困難。 重度:激痛、著しい腫れや内出血、靭帯断裂の可能性。歩行不可能。 応急処置: 応急処置としてRICE処置を行いましょう。 安静(Rest): 怪我をした足を動かさないようにし、体重をかけないように松葉杖などを使用します。 冷却(Ice): 氷水を入れた袋や冷湿布などで、患部を15~20分冷やします。凍傷を防ぐため、タオルなどを巻いて直接皮膚に氷を当てないようにしてください。2時間おきくらいに繰り返すと効果的です。 圧迫(Compression): 弾性包帯などで患部を圧迫することで、腫れや内出血を抑えます。ただし、きつく巻きすぎると血行が悪くなるので、適度な強さで圧迫しましょう。 挙上(Elevation): 怪我をした足を心臓よりも高い位置に上げることで、腫れや痛みを軽減します。 前十字靭帯損傷:診断と治療法 前十字靭帯は、膝関節の中にある靭帯で、膝の安定性を保つ重要な役割を担っています。ジャンプの着地や急な方向転換などで膝をひねると、この靭帯が損傷することがあります。 診断: 診察、レントゲン検査、MRI検査などによって診断します。MRI検査では、靭帯の状態を詳細に確認できます。 治療法: 損傷の程度により、保存療法(手術をしない治療)または手術療法を選択します。保存療法では、サポーターや装具による固定、リハビリテーションを行います。靭帯が完全に断裂している場合は、手術が必要になることが多いです。 肉離れ(ハムストリング、内転筋など):重症度とリハビリ 肉離れは、筋肉が急激に収縮したり、伸ばされたりすることで、筋肉線維が損傷する怪我です。太ももの裏側のハムストリングスや内ももの内転筋に起こりやすく、ダッシュやジャンプなどの動作で発生しやすいです。 重症度: 軽度(筋線維の一部損傷)、中等度(筋線維の広範囲損傷)、重度(筋線維の完全断裂)の3段階に分けられます。重症度が高いほど、痛みや腫れが強く、スポーツ復帰までの期間も長くなります。 リハビリ: 損傷の程度によって異なりますが、初期には安静と冷却が重要です。急性内転筋損傷に関する研究では、部分断裂の場合は1~7週間でスポーツに復帰できたという報告があります。痛みが引いてきたら、ストレッチや軽い筋力トレーニングを行い、徐々に運動強度を上げていきます。 骨折(手指、足趾など):固定期間と後遺症 バスケットボールでは、指の骨折も起こりえます。ボールが当たったり、転倒した際に地面に手をついたりすることで発生します。 固定期間: 骨折の種類や程度によって異なりますが、通常は数週間から数ヶ月かかります。 後遺症: 関節の動きが悪くなったり、変形が残ったりすることもあります。早期に適切な治療を受けることが重要です。 怪我の原因と予防策5選 バスケットボールは、ジャンプやダッシュ、急な方向転換、そして選手同士の接触など、全身を使う激しいスポーツです。そのため、他のスポーツに比べて怪我のリスクが高いのも事実です。 当院の整形外科にも、バスケットボールで怪我をした多くの学生さんが来院されます。 ですが、正しい知識を持って適切な対策を講じることで、怪我を予防し、安全にバスケットボールを楽しむことが十分可能です。 今回は、怪我の主な原因と、具体的な予防策を5つご紹介します。 危険なプレーとポジション別のリスク 危険なプレーは、文字通り怪我に直結しやすいため、特に注意が必要です。 例えば、ジャンプの着地時にバランスを崩したり、無理な体勢でシュートを打つと、足首や膝を痛める可能性があります。 また、接触プレーが多いポジションは、他のポジションと比べて怪我のリスクが高くなります。 リバウンドやディフェンスで競り合うセンターは、他の選手と衝突して骨折したり、膝の靭帯を損傷するリスクがあります。 ドリブルで切り込むガードは、相手選手に足を踏まれて足関節を捻挫したり、指を突き指するリスクがあります。 このように、ポジションによって特有の怪我のリスクがあるので、それぞれに合った予防策を講じることが大切です。 激しい接触を伴うプレーでは、自分が怪我をするだけでなく、相手に怪我をさせてしまう可能性もあることを常に意識しましょう。 シューズやサポーターの選び方 バスケットボールをする際は、自分の足のサイズに合ったバスケットボールシューズを選びましょう。 きつすぎる、あるいはゆるすぎるシューズは、足への負担を増大させ、怪我のリスクを高めます。 また、足首や膝などの関節を保護するために、サポーターを着用することも有効です。 サポーターは、関節の安定性を高め、急な動きによる怪我を予防する効果が期待できます。 特に足首は、バスケットボールにおいて最も怪我の多い部位の一つです。 足首用のサポーターは、足首の関節をしっかりと固定し、捻挫などの怪我から守ってくれます。 サポーターを選ぶ際には、自分の足首のサイズに合ったものを選び、正しく装着することが重要です。 ウォーミングアップとクールダウンの重要性 ウォーミングアップは、運動前の準備体操です。 体温を上げ、筋肉や関節の柔軟性を高める効果があります。 ウォーミングアップをしっかり行うことで、怪我の予防だけでなく、パフォーマンスの向上にもつながります。 例えば、準備運動なしで急にダッシュすると、筋肉が急激に収縮し、肉離れを起こすリスクがあります。 クールダウンは、運動後の整理体操です。 疲労した筋肉をリラックスさせ、柔軟性を維持する効果があります。 クールダウンを行うことで、筋肉痛や怪我の予防につながります。 例えば、運動後にクールダウンを行わずに急に身体を休めると、筋肉が硬直し、怪我をしやすくなります。 怪我後の適切な対処法と復帰までの流れ バスケットボールは、ジャンプや急な方向転換、選手同士の接触など、身体への負荷が大きいスポーツです。だからこそ、怪我のリスクも高く、適切な予防策と迅速な対処が重要になります。 医療機関の選び方:専門医の探し方 RICE処置を行っても痛みが続く場合や、怪我の程度が心配な場合は、医療機関を受診しましょう。整形外科、特にスポーツ整形外科の専門医を受診するのがおすすめです。スポーツ整形外科医は、スポーツによる怪我の診断と治療に精通していますので、適切なアドバイスをもらえます。 近くの医療機関を探す場合は、インターネットで検索したり、学校の先生や部活の顧問の先生、保護者の方に相談してみましょう。 治療方法:保存療法と手術療法 怪我の治療法には、大きく分けて保存療法と手術療法があります。保存療法は、手術をせずに、薬やリハビリテーションなどで怪我を治す方法です。内服薬や外用薬、注射、装具療法、理学療法などがあります。一方、手術療法は、手術によって怪我を治す方法です。例えば、靭帯が完全に断裂している場合や、骨折した骨がずれている場合などに行います。医師は怪我の状態に合わせて、適切な治療法を判断します。 リハビリテーション:段階的な復帰プラン 怪我がある程度治まったら、リハビリテーションを開始します。リハビリテーションでは、怪我をした部分の機能回復、筋力強化、柔軟性の改善などを目的とした運動を行います。 リハビリテーションは、無理なく段階的に進めていくことが大切です。焦らず、医師や理学療法士の指導に従って行いましょう。復帰までの期間は、怪我の種類や程度によって異なります。肉離れの研究では、部分断裂であれば1週間から7週間でスポーツ復帰が可能という報告もあります。医師と相談しながら、復帰の時期を決定します。 再発防止:日常生活での注意点 せっかく治った怪我を再発させないためには、日常生活での注意も大切です。ウォーミングアップやクールダウンをしっかり行うこと、ストレッチで柔軟性を高めておくこと、そして適切な休息と栄養管理を心がけることで、怪我の予防につながります。また、バスケットボールを再開する際も、最初は無理をせず、徐々に運動強度を上げていくようにしましょう。特に成長期の皆さんは、骨が未成熟なため、大人よりも骨折しやすい状態にあります。無理な運動は避け、身体を大切にしましょう。 まとめ バスケットボールで起こる怪我について、種類、原因、予防策、治療法、そして怪我からの復帰までの流れを解説しました。バスケットボールは、ジャンプや急な方向転換、選手同士の接触など、身体への負荷が大きいスポーツです。だからこそ、怪我のリスクも高く、適切な予防策と迅速な対処が重要になります。 怪我を予防するためには、ウォーミングアップやクールダウン、ストレッチ、筋力トレーニングなどをしっかりと行い、身体を万全な状態に保つことが大切です。また、シューズやサポーターを適切に選び、危険なプレーは避けるようにしましょう。 もし怪我をしてしまったら、まずは落ち着いてRICE処置を行い、必要に応じて医療機関を受診しましょう。スポーツ整形外科の専門医に相談すれば、適切な診断と治療を受けることができます。 リハビリテーションは、焦らず医師や理学療法士の指導に従って行いましょう。復帰後も再発防止に努め、バスケットボールを長く楽しんでくださいね。 参考文献 Farrell SG, Hatem M, Bharam S. “Acute Adductor Muscle Injury: A Systematic Review on Diagnostic Imaging, Treatment, and Prevention.” The American journal of sports medicine 51, no. 13 (2023): 3591-3603. Crotti M, Heering T, Lander N, Fox A, Barnett LM, Duncan MJ. “Extrinsic Risk Factors for Primary Noncontact Anterior Cruciate Ligament Injury in Adolescents Aged between 14 and 18 years: A Systematic Review.” Sports medicine (Auckland, N.Z.) 54, no. 4 (2024): 875-894.