石灰沈着性腱板炎の痛みから解放される!治療法と完治までの期間を専門医が解説

「肩の激痛で眠れない夜を過ごしていませんか?」

40~50代女性に多いとされる石灰沈着性腱板炎。
突然の激痛、夜間の痛み、腕を上げる動作の困難さ…
日常生活に深刻な支障をきたすこの病気は、まるで熱い油をかけたような、耐え難い痛みを引き起こすと言われています。

しかし、安心してください。

この記事では、石灰沈着性腱板炎の原因、症状、そして最新の治療法を専門医が詳しく解説します。保存的治療から手術まで、様々な治療法と、完治までの期間、そして再発予防策まで網羅。

約80%の患者さんが保存的治療で改善するとも言われていますが、あなたの症状はどの治療法が適切なのか、詳しく見ていきましょう。

今すぐ、この耐え難い痛みから解放される方法を見つけませんか?

肩の痛みは、日常生活に大きな支障をきたす悩ましい症状です。夜も眠れないほどの激痛に襲われる方もいるほどです。肩の痛みの中でも、石灰沈着性腱板炎は、特に激しい痛みを引き起こす病気の一つです。

石灰沈着性腱板炎とは、肩の関節にある腱板という組織に、リン酸カルシウム(いわゆる石灰)が沈着し、炎症を起こす病気です。

肩の痛みの特徴

石灰沈着性腱板炎の痛みは、非常に特徴的です。

  • 突然の激痛: ある日突然、何の前触れもなく、肩に激痛が走るのが特徴です。まるで電気が走ったような、焼けるような痛みと表現されることもあり、私の患者さんでも「腕に熱い油をかけたような痛み」と表現された方がいました。
  • 夜間痛: 夜になると痛みが強くなり、眠れないほど辛い場合もあります。これは、炎症によって生じた発痛物質が夜間に増加するためと考えられています。
  • 動作時の痛み: 腕を上げたり、後ろに回したりする動作で痛みが強くなります。これは、これらの動作で腱板が強く引っ張られ、石灰沈着部位に刺激が加わるためです。
  • 安静時の痛み: 何もしていなくてもズキズキと痛むことがあります。これは、炎症が持続しているためです。

可動域制限と日常生活への影響

石灰沈着性腱板炎は、肩の痛みだけでなく、関節の動きが悪くなる「可動域制限」も引き起こします。腱板に石灰が沈着すると、腱板がスムーズに動かなくなり、肩関節の動きが制限されるのです。

  • 衣服の着脱: シャツの袖を通したり、ブラジャーのホックを留めるのが難しくなります。
  • 髪の手入れ: 髪を洗ったり、ドライヤーをかける際に腕を上げることが困難になります。
  • 入浴: 頭を洗ったり、体を洗う際に腕を動かすのが辛くなります。
  • 睡眠: 寝返りを打つ際に肩に痛みが走り、安眠を妨げられます。
  • 仕事: デスクワークでのパソコン作業や、力仕事での持ち上げ動作で肩に負担がかかり、痛みが悪化します。
  • 家事: 洗濯物を干す、料理をする、掃除機をかけるといった日常的な家事も困難になります。
  • 趣味: スポーツや楽器演奏、編み物など、肩を使う趣味を楽しめなくなります。

このような日常生活への影響は、患者さんの生活の質(QOL)を著しく低下させる可能性があります。

症状が悪化する要因

石灰沈着性腱板炎の症状は、以下のような要因によって悪化することがあります。

  • 肩への負担: 重い物を持ち上げたり、腕を無理に動かしたりすると、腱板への負担が増加し、炎症が悪化します。
  • 冷え: 冷えると血行が悪くなり、肩の筋肉が硬直し、痛みが強くなります。
  • ストレス: ストレスは自律神経のバランスを崩し、痛みを増強させる可能性があります。
  • 睡眠不足: 睡眠不足は、体の修復機能を低下させ、炎症の治癒を遅らせ、痛みを悪化させる可能性があります。

これらの要因を理解し、注意することで、症状の悪化を予防し、回復を促進することに繋がります。

石灰沈着性腱板炎は、腱板にリン酸カルシウム(いわゆる石灰)が沈着し、炎症を起こす病気です。

なぜ石灰が沈着するのか、そのメカニズムは完全には解明されていません。
しかし、細胞が変化し、石灰化を引き起こすという説が有力です。

まるで、骨を作る細胞が、本来あるべきでない肩の腱に迷い込んでしまったかのように、石灰をどんどん作ってしまいます。

いくつかのリスクファクター(危険因子)は明らかになっています。
リスクファクターを知ることで、予防につなげたり、早期発見のきっかけ作りに繋がります。

年齢や性別に関連するリスク

石灰沈着性腱板炎は、40代から50代の女性に多く見られます。20代や30代といった若い世代での発症は比較的少ないですが、皆無ではありません。

女性に多い理由としては、女性ホルモンの影響や、家事や育児などで肩を使う機会が多いことなどが考えられています。

年齢層別の男女比と発生頻度を以下に示します。

年齢層 男女比 発生頻度
20~30代 女性 > 男性 低い
40~50代 女性 > 男性 高い
60代以上 女性 ≧ 男性 やや低い

運動や過負荷がもたらす影響

石灰沈着性腱板炎は、肩を繰り返し使う動作によって発症リスクが高まります。

例えば、野球のピッチャーやバレーボールのアタッカー、バドミントンのスマッシュを多用する選手など、肩関節に大きな負担がかかるスポーツをする人は特に注意が必要です。

また、重い荷物を持ち上げたり、運ぶ作業が多い仕事をしている人もリスクが高くなります。

その他の関連疾患との関係

石灰沈着性腱板炎は、他の肩の疾患、例えば腱板断裂や肩峰下滑液包炎などを併発している場合があります。

腱板断裂とは、肩の腱が切れてしまう病気です。

肩峰下滑液包炎とは、肩の関節にある袋に炎症が起こる病気です。

また、糖尿病や甲状腺機能低下症などの内分泌疾患も、石灰沈着性腱板炎のリスクを高める可能性があるといわれています。

これらの疾患は体内の代謝に影響を与えるため、腱へのカルシウム沈着を促進する可能性があると考えられています。

保存的治療の概要と効果

  • 安静: 痛む肩を極力動かさないように安静を保つことが重要です。

  • 消炎鎮痛剤: 炎症を抑え、痛みを和らげる薬です。内服薬としては、ロキソプロフェンナトリウムやイブプロフェンなどが用いられます。

  • 湿布: 炎症を抑え、痛みを和らげる効果があります。

  • 注射: 肩関節に直接ステロイド注射を行うことで、炎症や痛みを速やかに抑えることができます。ステロイドは強力な抗炎症作用を持つ薬剤で、炎症の原因となっている物質の働きを抑える効果があります。

  • 理学療法: 肩の筋肉をほぐしたり、ストレッチを行うことで、肩関節の動きをスムーズにします。

  • 体外衝撃波: 体の外から衝撃波を当てて、石灰を砕く治療法です。手術に比べて体への負担が少ないのがメリットです。衝撃波が石灰に直接働きかけ、石灰を細かく砕くことで、体内に吸収されやすくします。

    これらの保存的治療で、文献にもあるように約80%の患者さんの症状が改善すると言われています。

手術が必要なケースの見極め

多くの場合、保存的治療で症状が改善しますが、痛みが強い場合や保存的治療を続けても効果がない場合は、手術が必要になることもあります。

手術が必要なケースとしては、3ヶ月以上保存的治療を続けても効果がない場合があげられます。

手術には、関節鏡を用いた手術と切開手術の2種類があります。どちらの手術法を選択するかは、患者さんの状態や石灰の大きさ、場所などを考慮して決定します。

完治までの期間と再発予防策

石灰沈着性腱板炎の完治までの期間は、症状の重さや治療法によって異なります。

保存的治療の場合、数週間から数ヶ月かかることが多いです。手術を行った場合は、数ヶ月から1年程度かかることもあります。

再発予防策としては、肩に負担をかけすぎない、適度な運動をする、ストレッチをする、冷えに注意するなどが挙げられます。腱板に負担をかけ続けると、石灰が再沈着する可能性があります。

石灰沈着性腱板炎は、肩の腱に石灰が沈着し激しい痛みが起こる病気です。

突然の激痛や夜間痛、腕を上げるときの痛みなどが特徴で、日常生活に大きな支障をきたします。

治療はまず保存的治療から始めます。安静、消炎鎮痛剤、湿布、注射、理学療法、体外衝撃波など、様々な方法があります。
多くの場合、これらの治療で改善しますが、症状が改善しない場合は手術が必要になることもあります。

完治までの期間は症状の重さや治療法によって数週間から1年以上と様々です。

肩の痛みに悩んでいる方は、我慢せず早めに整形外科を受診し、適切な治療を受けて、快適な生活を取り戻しましょう。 早期発見・早期治療が、痛みからの解放への近道です。

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