四十肩・五十肩は病院へいくべき?受診の目安と適切な診療科を解説

肩の痛み、上がらない、後ろに回らない…そんな症状に悩まされていませんか?
実は、日本人の約5-10%が経験するといわれる四十肩・五十肩かもしれません。

医学的には「肩関節周囲炎」と呼ばれ、肩関節周辺の炎症が原因で、痛みや動かしにくさを引き起こします。 放置すると日常生活に支障をきたすだけでなく、肩関節の機能低下にもつながる可能性も。

この記事では、四十肩・五十肩の症状や原因、自然治癒の可能性、そして病院へ行くべき目安や適切な診療科まで、詳しく解説します。


つらい肩の痛みから解放され、快適な生活を取り戻すためのヒントが満載です。

四十肩・五十肩とは?原因や症状、自然治癒の可能性

四十肩・五十肩は、医学的には「肩関節周囲炎」と呼ばれ、肩関節とその周辺の組織に炎症が起こる病気です。

肩関節周囲炎は肩関節を包む袋状の組織である関節包に炎症や線維化が生じ、肩の痛みや動きの制限を引き起こします。

この線維化は、まるで関節包が縮んで硬くなってしまうようなイメージです。
これにより、腕を動かす際に肩に痛みを感じたり、動きが悪くなったりします。

例えば、腕を上げようとしても途中で痛みが走って上がらなかったり、後ろに手を回そうとしても肩甲骨あたりで引っかかるような感覚があったりします。
さらに、夜になると痛みが強くなる「夜間痛」も四十肩・五十肩の特徴的な症状です。

四十肩・五十肩は自然治癒する可能性もありますが、治るまでの期間は人それぞれです。

自然治癒を待つにしても、適切な治療を行うことで、より早く回復し、後遺症を残さずに治すことができます。

四十肩・五十肩の症状を詳しく解説:痛み、可動域制限、日常生活への影響

四十肩・五十肩の症状は、主に「痛み」「動きの制限(可動域制限)」「日常生活への影響」の3つに分けられます。

痛み: 初期は腕を特定の方向に動かしたときだけ鋭い痛みを感じますが、次第に安静時にも鈍い痛みを感じるようになります。

動きの制限(可動域制限): 肩関節が硬くなり、腕を上げたり、後ろに回したり、横に広げたりする動作が困難になります。
例えば、ズボンの後ろポケットに手を入れるのが困難になったりする患者さんもいます。

日常生活への影響: 痛みと動きの制限により、日常生活に様々な影響が出ます。

洗濯物を干す、洗髪する、着替える、車の運転をする、字を書く、パソコン作業をするなど、多くの動作が困難になることがあります。

私の患者様でも、四十肩・五十肩によって、仕事に支障が出ている方や、家事が思うようにできなくなっている方がいらっしゃいます。

>>【セルフチェック】四十肩・五十肩の初期症状10個/放置すると危険な兆候とは

https://sakuha-seikei.com/frozen-shoulder-selfcheck

四十肩と五十肩の違い:発症年齢、症状の特徴

四十肩と五十肩は、名前は違いますが、医学的には同じ「肩関節周囲炎」です。
40代で発症すれば四十肩、50代で発症すれば五十肩と呼ばれます。
発症年齢以外に症状や原因に違いはありません。

四十肩・五十肩の原因を解明:加齢、肩関節の炎症、運動不足など

四十肩・五十肩の明確な原因は完全には解明されていませんが、加齢、肩関節の炎症、運動不足、不良姿勢、糖尿病などの病気が関係していると考えられています。

四十肩・五十肩は自然治癒する?治るまでの期間と予後

四十肩・五十肩は自然治癒する可能性が高い病気ですが、治るまでの期間は人それぞれで、数ヶ月から数年かかる場合もあります。

一般的には1~2年程度かかると言われていますが、数ヶ月で治る人もいれば、数年かかる人もいます。

また、適切な治療を受けずに放置すると、肩関節が硬くなって動きが悪くなる「拘縮」という状態になる可能性もあります。

拘縮が起こると、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。

適切な治療とリハビリテーションを行うことで、より早く回復し、後遺症を残さずに治すことができますので、早期の受診をお勧めします。

病院に行くべき?適切な診療科と受診の目安

肩に痛みや違和感を感じた時、「歳のせいかな」「そのうち治るだろう」と軽く考えてしまいがちです。確かに、肩の痛みは一時的なものや自然に治癒するものもありますが、中には四十肩・五十肩のように長引く場合もあります。

肩の痛みを我慢し続けると、日常生活に支障が出るだけでなく、将来的に肩関節の機能低下につながる可能性も懸念されます。早期に適切な治療を開始することで、痛みを軽減し、肩の動きをスムーズに取り戻せる可能性が高まります。

「病院に行くほどではないかな?」と迷っている方も、まずはご自身の症状と受診の目安を確認してみましょう。

こんな症状が出たら病院へ:激しい痛み、夜間痛、日常生活への支障

セルフチェック

具体的には、以下のような症状が現れたら、受診の目安としてください。

激しい痛み: 電気が走るような鋭い痛み、ズキズキと脈打つような強い痛み

夜間痛: 痛みのために何度も目が覚めてしまう、痛みで寝返りが打てない

日常生活への支障: 服が着られない、髪が洗えない、運転に支障が出る、仕事に集中できない

これらの症状は、肩関節周囲炎の特徴的な症状であり、放置すると症状が悪化したり、慢性化したりする可能性があります。

どの診療科を受診する?整形外科、リハビリテーション科、ペインクリニック

四十肩・五十肩の治療は、主に整形外科で行います。整形外科では、レントゲン検査やMRI検査などを行い、正確な診断に基づいた治療方針を決定します。

私のクリニックでは、まず問診で症状や生活状況を詳しく伺い、身体診察で肩関節の動きや痛みの程度を確認します。必要に応じて、レントゲン検査やMRI検査を行い、肩腱板損傷や肩石灰沈着性腱炎など他の疾患との鑑別も行います。

整形外科以外にも、リハビリテーション科やペインクリニックを受診する選択肢もあります。

リハビリテーション科では、理学療法士によるリハビリテーションを受けることができ、肩関節の可動域 エクササイズやストレッチなどを通して肩の機能回復を目指します。

また、ペインクリニックを受診するという選択肢もあります。ペインクリニックでは、神経ブロック注射などの痛みを和らげる治療を受けることができます。

受診前に確認!スムーズな診察のために準備しておきたいこと

受診前に、症状や既往歴などをメモしておくと、医師への説明がスムーズになります。

・いつから痛み始めたのか?
・どのような時に痛みを感じるか?(例:腕を上げるとき、夜寝ているときなど)
・痛みの程度は?(例:軽い痛み、我慢できる程度の痛み、激しい痛みなど)
・日常生活で困っていることは?(例:服を着替えにくい、髪が洗えないなど)
・過去のケガや病気
・現在服用中の薬

これらの情報を整理しておけば、医師に的確に状況を伝えることができます。

受診のタイミング:症状の悪化、改善が見られない場合

四十肩・五十肩は自然治癒する可能性もありますが、痛みが強い、日常生活に支障が出ている場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。

1~2週間様子を見ても症状が改善しない、あるいは悪化する場合は、放置せずに受診しましょう。
特に、夜間痛がひどく睡眠不足になっている場合や、日常生活に大きな支障が出ている場合は、早めに受診することをお勧めします。


早期に適切な治療を開始することで、症状の悪化を防ぎ、早期回復につながります。

まとめ

肩の痛みや動かしづらさ、四十肩・五十肩かな?と思ったら、この記事がお役に立てたでしょうか?

四十肩・五十肩は肩関節周囲炎のことで、自然治癒することもありますが、適切な治療で早期回復を目指せる病気です。

激しい痛み夜間痛日常生活への支障が出たら、整形外科、リハビリテーション科、ペインクリニックへの受診を検討しましょう。

参考文献

  1. Cho CH, Bae KC, Kim DH. “Treatment Strategy for Frozen Shoulder.” Clinics in orthopedic surgery 11, no. 3 (2019): 249-257.
  2. Millar NL, Meakins A, Struyf F, Willmore E, Campbell AL, Kirwan PD, Akbar M, Moore L, Ronquillo JC, Murrell GAC, Rodeo SA. “Frozen shoulder.” Nature reviews. Disease primers 8, no. 1 (2022): 59.