肩の痛み、動かしづらさ、ありませんか?
特に夜間や就寝時に痛みが強く、目が覚めてしまう、服の着脱や髪を洗うのも辛い、といった症状はありませんか?
実はこれらは、四十肩・五十肩の初期症状かもしれません。
この記事では、セルフチェックを通してご自身の肩の状態を把握し、四十肩・五十肩の初期症状10個、原因、進行段階、そして様々な治療法と予防法までを網羅的に解説します。
早期発見・早期治療が重要となる肩関節のトラブル、今すぐチェックを始めましょう。

セルフチェック! 四十肩・五十肩の初期症状10個
肩の痛みや動かしづらさは、日常生活に大きな影を落とします。特に四十肩・五十肩は、中年以降に起こるイメージが強いですが、20代から発症する方もいます。初期症状は軽い場合が多く、見逃してしまうことも少なくありません。早期発見・早期治療のためにも、まずはご自身の肩の状態をセルフチェックしてみましょう。
①肩の痛み(安静時、夜間、運動時)
四十肩・五十肩の初期症状として最も多いのが肩の痛みです。安静時、夜間、運動時など、様々な場面で痛みを感じることがあります。
安静時の痛みは、じっとしているのに肩がズキズキと痛む、まるで肩に重りが乗っているような感覚と表現されることもあります。私の患者さんの中には、「肩にアリが這っているようなチクチクした痛み」と訴える方もいらっしゃいました。
夜間の痛みは、特に寝ている時に強く現れ、痛みで目が覚めてしまうこともあります。仰向けで寝ると肩が圧迫され痛むため、横向きで寝ざるを得ないという患者さんも少なくありません。慢性的な肩の痛みは、睡眠の質を低下させ、日中の活動にも悪影響を及ぼします。
運動時の痛みは、腕を上げたり、回したりする際に痛みが増強します。例えば、洗濯物を干そうと腕を上げた時や、エプロンの紐を後ろで結ぼうとした時に鋭い痛みを感じる方がいます。
これらの痛みは、肩関節周囲の炎症によって引き起こされます。初期症状に気づいたら、早めに医療機関を受診することが大切です。
②肩の動きが悪い(腕が上がらない、後ろに回らない)
肩の動きが悪くなることも、四十肩・五十肩の初期症状の一つです。腕を真上に上げようとしても肩の高さまでしか上がらない、後ろに手を回そうとしても腰のあたりまでしか届かない、といった症状が現れます。これは、肩関節の炎症や癒着によって関節の可動域が制限されていることが原因です。
例えば、洋服の着脱に苦労する、髪を洗うのが困難になる、といった日常生活の動作に支障が出始めます。私の患者さんの中には、ブラジャーのホックを留めることができなくなり、来院された方もいらっしゃいます。
③痛みで目が覚める
夜間、肩の痛みで目が覚める場合は、四十肩・五十肩の初期症状の可能性が高いです。睡眠中は無意識に寝返りを打ちますが、その際に肩に負担がかかり、痛みで目が覚めてしまうのです。痛みで何度も目が覚めることで睡眠不足に陥り、日中の集中力低下や倦怠感につながることもあります。
④服の着脱が困難
四十肩・五十肩になると、腕を上げたり、後ろに回したりする動作が難しくなり、服の着脱が困難になります。特に、シャツやブラウスのボタンを留める、セーターを頭から被る、といった動作は肩への負担が大きいため、強い痛みを伴う場合があります。
⑤髪を洗うのが困難
腕を上げる動作が制限されるため、髪を洗うのが困難になります。シャンプーをしたり、コンディショナーを洗い流したりする際に、肩に痛みが走り、思うように髪を洗えないといった悩みを抱える患者さんも多くいらっしゃいます。
⑥結帯動作が困難になる
腕を後ろに回す動作が難しくなるため、帯を結ぶ動作が困難になります。着物を着る方や、エプロンを着用する際に、肩に痛みを感じることがあります。
⑦背中を洗うのが困難になる
腕を後ろに回す動作が制限されるため、背中を洗うのが困難になります。タオルで背中を洗う際に、肩に痛みを感じ、十分に洗えないという患者さんもいます。
⑧高いところに手が届かない
腕を上げる動作が制限されるため、高いところに手が届かなくなります。高い棚にある物を取ろうとしたり、電球を交換しようとしたりする際に、肩に痛みを感じることがあります。
⑨日常生活での動作が制限される
四十肩・五十肩は、日常生活での様々な動作を制限する可能性があります。例えば、洗濯物を干す、料理をする、掃除をするといった動作で、肩に痛みを感じることがあります。これらの動作が困難になることで、日常生活に支障をきたし、生活の質が低下する可能性があります。
⑩運転がしづらい
腕を回す動作が制限されるため、運転がしづらくなります。ハンドル操作やウインカー操作の際に、肩に痛みを感じることがあります。また、バックミラーを確認する際にも、肩を回す必要があるため、痛みを伴い、安全な運転に支障が出る可能性があります。

>>四十肩・五十肩は病院へいくべき?受診の目安と適切な診療科を解説
四十肩・五十肩の原因と進行段階
肩の痛みや動かしづらさ、辛いですよね。特に「四十肩」「五十肩」という名前は、中高年の方がかかるイメージが強いですが、実は20代から発症する可能性もあるんです。
私のクリニックにも、30代の若いお母さんが、お子さんを抱っこした際に肩に激痛が走り来院されたケースがありました。彼女は「まさか自分が四十肩だなんて…」と驚かれていましたが、レントゲン検査の結果、四十肩と診断されました。このように、年齢に関わらず発症する可能性があるということを知っておくことが大切です。
原因(加齢、肩関節の炎症、外傷、糖尿病など)
四十肩・五十肩の正式名称は「肩関節周囲炎」です。その名の通り、肩関節周辺の炎症が原因で起こりますが、なぜ炎症が起こるのか、そのメカニズムは完全には解明されていません。加齢による肩関節周囲の組織の老化、肩への過度な負担、外傷、糖尿病などの持病などが関係していると考えられています。
例えば、野球のピッチャーやバレーボールのアタッカーなど、特定の動作を繰り返し行うスポーツ選手は、肩関節に大きな負担がかかり、四十肩・五十肩を発症するリスクが高くなります。また、デスクワークなどで長時間同じ姿勢を続ける方も、肩周りの筋肉が緊張しやすく、血行不良から炎症を引き起こす可能性があります。
さらに、糖尿病の方は、高血糖によって血管が傷つきやすく、血行が悪くなることで、肩関節周囲の組織にも栄養が行き渡りにくくなり、炎症を起こしやすくなると考えられています。

凍結期(疼痛期):激しい痛み、運動制限が少ない
四十肩・五十肩は、一般的に3つの段階に分けられます。最初の段階は「凍結期(疼痛期)」です。この時期の特徴は、何と言っても激しい痛みです。安静時でもズキズキと痛むだけでなく、夜間、特に寝ている時に痛みが強くなり、目が覚めてしまう方も少なくありません。
私の患者さんの中には、「夜中に肩の痛みで目が覚め、痛みで眠れなかった」と訴える方が多くいらっしゃいます。このような痛みが続くと、睡眠不足から日中の活動にも影響が出て、仕事や家事に集中できなくなることもあります。
この時期は、肩の動きはまだそれほど制限されていませんが、痛みのため動かしづらいと感じるはずです。例えば、ブラウスのボタンを留めようとしたり、髪を後ろで束ねようとした時に、鋭い痛みを感じるかもしれません。
凍結期(癒着期):痛みは軽減、運動制限が顕著になる
次の段階は「凍結期(癒着期)」です。この段階になると、痛みは徐々に軽くなってきますが、今度は肩関節の動きが悪くなってきます。腕を上げようとしても肩の高さまでしか上がらなかったり、後ろに手を回そうとしても腰のあたりまでしか届かなかったりするようになります。
日常生活にも大きな影響が出てきて、服を着替えたり、髪を洗ったり、エプロンの紐を結んだりといった、普段何気なく行っていた動作が困難になります。
例えば、スーパーで買い物かごを持つ、電車でつり革につかまるといった動作も辛くなってきます。私の患者さんの中には、洗濯物を干すことができなくなり、家事を手伝ってもらわなければならなくなった方もいらっしゃいました。
融解期:痛みと運動制限が徐々に改善
最後の段階は「融解期」です。この時期になると、痛みや動きの制限が徐々に改善していきます。肩の動きもスムーズになり、日常生活も以前のように送れるようになってきます。
融解期には自然に症状が改善していくことが多いですが、適切な治療やリハビリを行うことで、より早く回復することができます。オーストラリアの研究でも、理学療法による運動が四十肩の治療に効果的であることが報告されています。
四十肩・五十肩は、自然治癒することもありますが、適切な治療を受けずに放置すると、痛みが慢性化したり、肩関節の可動域が狭くなったままになってしまう可能性もあります。少しでも気になる症状があれば、早めに医療機関を受診することをおすすめします。

四十肩・五十肩の治療法と予防法
肩の痛みや動かしにくさで日常生活に支障が出ていると、不安になりますよね。適切な治療を受けることで、痛みを和らげ、回復を早めることができます。四十肩・五十肩は自然に治ることもありますが、適切な治療を受けることで、痛みを軽減し、回復を早めることができます。ご自身の状態に合った治療法を選択するために、それぞれの治療法の特徴を理解しておきましょう。
保存療法(薬物療法、理学療法、注射、装具療法など)
保存療法は、手術をせずに痛みや炎症を抑え、肩の動きを改善する治療法です。多くの慢性肩痛患者はこの保存療法で治療できます。日常生活への影響を最小限に抑えながら治療を進められることがメリットです。
薬物療法: 痛みや炎症を抑える薬を内服します。消炎鎮痛剤は、炎症を抑え、痛みを軽減する効果があります。胃腸障害の副作用が出現する可能性があるため、胃が弱い方は、薬を飲む際に牛乳などを一緒に飲むと、胃への負担を軽減できることがあります。私の患者さんの中には、薬の副作用で食欲不振になってしまった方もいらっしゃいましたが、服用時間を調整したり、胃薬を併用したりすることで改善がみられました。
理学療法: 専門の理学療法士の指導のもと、肩のストレッチや運動を行います。理学療法士は、患者さんの肩の状態に合わせて適切な運動プログラムを作成し、指導してくれます。オーストラリアの研究でも、理学療法による運動が四十肩の治療に効果的であると報告されています。お風呂で温めた後に行うと、筋肉が柔らかくなり、より効果的です。無理のない範囲で、毎日コツコツ続けることが大切です。私の患者さんの中には、理学療法を継続することで、痛みが軽減し、肩の可動域も広がった方が多くいらっしゃいます。
注射: 痛みや炎症が強い場合には、肩関節内に注射をすることもあります。ステロイド注射は、炎症を抑える効果が高いですが、繰り返し注射すると副作用の懸念も高まる場合があるので、医師とよく相談し、適切な頻度で注射を行うことが重要です。ヒアルロン酸注射は、関節の動きを滑らかにする効果があり、肩の動きを改善するのに役立ちます。
装具療法: 肩を安静にするために、サポーターや三角巾などを使用します。痛みが強い時期や、寝ている時に肩を守りたい時に役立ちます。装具を使用することで、肩への負担を軽減し、痛みを和らげることができます。私の患者さんの中には、装具を使用することで、夜間の痛みが軽減され、睡眠の質が向上した方もいらっしゃいます。
- 関節造影による授動術:肩関節の動きが制限された状態(拘縮)を改善する治療法です。
この方法では、造影剤を関節に注入して内部の状態を確認します。次に、その造影剤で関節の癒着を剥離し空間を広げ、広がった空間内で関節を他動的に動かして可動域を拡大する方法です。当院では手術の前段階とし、この方法も行っています。
手術療法(関節鏡手術など)
保存療法で十分な効果が得られない場合や、肩関節が癒着している場合には、手術を行うこともあります。関節鏡手術は、小さな傷口からカメラや器具を入れて行う手術で、体に負担が少ないというメリットがあります。手術後には、リハビリテーションを行い、肩の機能を回復させます。
家庭でできるセルフケア(ストレッチ、温罨法、冷罨法)
家庭でも、痛みを和らげ、肩の動きを良くするためのセルフケアを行うことができます。セルフケアは、治療の効果を高めるだけでなく、再発予防にも繋がります。
ストレッチ: 痛みのない範囲で、優しく肩を動かしましょう。お風呂上がりなど、体が温まっている時に行うと、筋肉が柔らかくなり、より効果的です。無理に動かすと痛みを悪化させる可能性があるので、注意が必要です。
- 温罨法(おんあんぽう): 温かいタオルや湯たんぽなどで肩を温めます。血行が良くなり、痛みが和らぎます。私の患者さんの中には、温罨法を行うことで、肩のこわばりが軽減し、動きがスムーズになった方もいらっしゃいます。
冷罨法: 痛みが強い時や、炎症が起きている時には、氷水を入れた袋などで肩を冷やします。炎症を抑え、痛みを軽減する効果があります。冷やしすぎると、かえって痛みが増す場合もあるので、15分程度を目安に行いましょう。
再発予防のための対策
四十肩・五十肩は再発しやすい病気です。再発を防ぐためには、日常生活での注意点を守ることが重要です。
適切な運動: 普段から適度な運動を心がけ、肩周りの筋肉を鍛え、柔軟性を保つことで再発予防につながります。過度な運動は逆効果となる場合があるので、ご自身の体力に合わせた運動を行いましょう。
正しい姿勢: 猫背や巻き肩にならないように、正しい姿勢を保つようにしましょう。パソコン作業やスマートフォンの使用などで長時間同じ姿勢を続ける場合は、こまめに休憩を取り、ストレッチを行うようにしましょう。
冷え対策: 肩を冷やさないように、温かい服装を心がけましょう。特に冬場は、マフラーやストールなどで肩を温めるように意識しましょう。
無理な動作をしない: 重い物を持ったり、急に肩を動かしたりするなど、無理な動作は避けましょう。日常生活の中で、肩に負担がかかる動作を意識し、できるだけ負担を軽減するように心がけましょう。
他の肩関節疾患との違い(頸椎症、腱板断裂、肩関節周囲炎など)
四十肩・五十肩は、肩関節周囲炎のひとつです。似たような症状が出る病気として、頸椎症や腱板断裂などがあります。四十肩・五十肩は肩関節周囲炎のひとつですが、他の疾患でも同様の症状が現れる可能性があるため、自己判断せずに医療機関を受診することが重要です。
頸椎症: 首の骨の変形などが原因で、肩や腕に痛みやしびれが出ます。首を動かすと痛みが強くなる、しびれが指先まで広がるなどの症状がある場合は、頸椎症の可能性も考えられます。
腱板断裂: 肩の筋肉や腱が切れてしまう病気です。転倒したり、重い物を持ち上げたりした時に起こりやすいです。腕を特定の方向に動かすと痛みが増す、腕の力が弱くなるなどの症状がある場合は、腱板断裂の可能性も考えられます。
- >>肩腱板損傷の完全ガイド/ 症状から治療法まで整形外科専門医が詳しく解説
肩関節周囲炎: 肩関節とその周囲の組織に炎症が起きる病気の総称です。四十肩・五十肩も肩関節周囲炎に含まれます。
これらの病気は、症状が似ているため、自己判断で治療するのは危険です。肩に痛みや違和感を感じたら、早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。
まとめ
肩の痛みや動かしづらさを感じたら、四十肩・五十肩の初期症状かもしれません。この記事では、セルフチェックできる10個の症状を紹介しました。安静時や夜間の痛み、腕が上がらない、服の着脱が困難など、思い当たる症状はありませんか?
四十肩・五十肩は、加齢や肩関節の炎症などが原因で起こり、放置すると日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。早期発見・早期治療のためにも、少しでも気になる症状があれば、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。
紹介したセルフチェック項目を参考に、ご自身の肩の状態を確認し、健康な毎日を送るためにも、早めの対応を心がけてくださいね。