変形性膝関節症はどんな人に多い?年齢・性別・生活習慣から見る発症リスク

75歳以上では3人に1人が罹患すると言われる変形性膝関節症。
これは、膝の軟骨がすり減ることで起こる病気で、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。「加齢によるものだから仕方がない」と諦める前に、まずは発症リスクについて知っておきましょう。

この記事では、変形性膝関節症になりやすい人の特徴をご紹介します。年齢や性別はもちろん、生活習慣、体重、さらには運動不足や食生活まで、様々な要因が複雑に絡み合っていることを解説します。あなたの膝の健康を守るために、ぜひ読み進めてください。

変形性膝関節症の発症リスクが高い人の特徴

年齢

年齢を重ねるごとに、変形性膝関節症のリスクは高まります。
75歳以上の方では、約3人に1人が変形性膝関節症になっているという報告もあります。これは長年の使用による軟骨の摩耗や、骨の老化、筋肉の衰えなどが原因です。

80代の女性で、長年趣味の社交ダンスを続けてきた方が来院されました。若い頃は全く問題なかったのに、ここ数年で膝の痛みが強くなり、大好きなダンスを続けられなくなってしまったと嘆いていらっしゃいました。加齢は誰にも避けられないものですが、適切なケアを行うことで進行を遅らせたり、痛みを軽減したりすることは可能です。

性別

変形性膝関節症は、女性に多く見られます。
男性に比べて女性の方が発症率が高いのは、女性ホルモン(エストロゲン)の減少、骨盤の形状、筋肉量の違いなどが影響していると考えられています。特に閉経後の女性はエストロゲンが急激に減少するため、軟骨の保護作用が弱まり、変形性膝関節症のリスクが高まります。

肥満と体重

体重が増加すると、膝関節への負担も大きくなります。
肥満の方は、そうでない方に比べて変形性膝関節症のリスクが数倍も高くなると言われています。1kg体重が増えるごとに、膝には3〜6kgの負担がかかるとも言われており、歩く、階段を上り下りするなどの動作をするたびに、軟骨への負担が大きくなってしまいます。

体重管理は、変形性膝関節症の予防と改善に非常に重要です。アメリカでは3200万人以上が変形性膝関節症に悩まされており、これは活動制限の最も大きな原因となっています。

生活習慣が変形性膝関節症に与える影響

運動不足

運動不足は、変形性膝関節症のリスクを高める大きな原因の一つです。
運動不足になると、膝周りの筋肉、特に太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)が衰え、関節を支える力が弱くなってしまいます。大腿四頭筋は、膝関節の安定性を保つ上で非常に重要な役割を果たしています。この筋肉が弱ると、膝への負担が増大し、軟骨のすり減りを加速させるのです。

椅子に座りながらでもできる簡単な運動として、足をまっすぐ伸ばし、つま先を上に持ち上げる運動があります。
10秒キープを10回繰り返すだけでも、大腿四頭筋を鍛える効果があります。テレビを見ている時間などを活用し、日常生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。

食生活

食生活も、変形性膝関節症の予防に重要な役割を果たします。バランスの取れた食事は、健康な軟骨や骨を維持するために不可欠です。特に、カルシウム、ビタミンDなどを積極的に摂り入れるように心がけましょう。

カルシウムは牛乳やヨーグルトなどの乳製品、鮭やいわしなどの魚介類、ひじきやわかめなどの海藻類に豊富に含まれています。
ビタミンDは、鮭やさんまなどの魚類、きのこ類、卵に多く含まれており、カルシウムの吸収を助ける働きがあります。

スポーツや活動

適度な運動は変形性膝関節症の予防に効果的ですが、過度な運動や間違ったフォームでのスポーツは、逆に膝への負担を増大させ、変形性膝関節症のリスクを高める可能性があります。

例えば、マラソンやバスケットボール、サッカーなど、膝に大きな衝撃や負担がかかるスポーツは注意が必要です。
ウォーミングアップを十分に行い、適切なフォームを意識することで、膝への負担を軽減することができます。また、痛みを感じたらすぐに運動を中止し、決して無理をしないようにしましょう。

趣味の園芸や畑仕事なども、長時間同じ姿勢を続けたり、膝を深く曲げたりする動作が多いため、膝への負担が大きくなります。適度に休憩を挟んだり、膝を保護するサポーターを着用するなど、工夫することで負担を軽減できます。

症状、診断方法

症状

  • 痛み: 初期は動作開始時や長時間同じ姿勢をとった後に痛みを感じることが多いです。
    進行すると、安静時や夜間にも痛みが続くようになり、日常生活に支障をきたすようになります。正座や和式トイレが困難になることもあります。
  • 腫れ: 関節に炎症が起こり、腫れや熱感を伴うことがあります。炎症が強い時は、膝が赤く腫れ上がることもあります。関節内に水が溜まることもあり、膝のお皿が浮いたような感覚を覚える患者さんもいます。
  • こわばり: 朝起きた時や長時間同じ姿勢を続けた後に、膝がこわばって動きにくい、と感じることがあります。これは関節が硬くなっているためです。しばらく動かしていると徐々に楽になりますが、進行するとこわばりが強くなり、日常生活に支障をきたすこともあります。
  • その他: 膝を曲げ伸ばしすると、ゴリゴリ、カクカクといった音が鳴ることもあります。これは、軟骨がすり減り、骨同士が擦れ合うことで発生する音です。また、膝が不安定になり、ぐらつくこともあります。

診断方法

検査方法 説明
問診 現在の症状、過去の病歴、生活習慣などを医師が質問します。
診察 医師が膝の状態を直接確認します(触診、可動域のチェックなど)。O脚やX脚の有無も確認します。
レントゲン検査 関節の隙間、骨棘の有無、骨の変形などを確認します。変形性膝関節症の診断に最も重要な検査です。
MRI検査 軟骨、靭帯、半月板などの状態を詳しく調べます。レントゲンでは写らない組織の状態を評価できます。

進行度の評価

変形性膝関節症は進行性の病気であり、放置すると症状が悪化し、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。

進行度は、レントゲン写真で確認できる関節の隙間の狭まり具合や骨棘の大きさ、症状の程度などから総合的に判断します。

早期に発見し、適切な治療を行うことで、進行を遅らせ、日常生活の質を維持することが可能です。少しでも気になる症状があれば、早めに医療機関を受診しましょう。

まとめ

変形性膝関節症は、年齢とともに発症リスクが高まる病気ですが、年齢以外にも性別や生活習慣、体重など様々な要因が影響します。

女性や肥満気味の方、運動不足の方、不適切な運動や長時間同じ姿勢での作業が多い方は特に注意が必要です。

しかし、諦める必要はありません。バランスの良い食事、適度な運動、正しい姿勢を意識することで予防や症状の悪化を抑制できます。

膝に痛みや違和感を感じたら、放置せずに整形外科を受診しましょう。早期発見・早期治療が、快適な生活を送るための鍵となります。進行度に応じた適切な治療を受けることで、痛みが軽減し、日常生活の質を向上させることが可能です。

参考文献