2025.1.28 Tue. 女性に多い肩こりの原因とは|ホルモンバランスから姿勢まで解説 リハビリ 肩 肩こり 肩こりは、多くの人が経験する一般的な症状ですが、特に女性に多く見られます。統計によると、肩こりの有訴者率(人口千人当たりの症状を訴える人の割合)は、男性よりも女性の方が高くなっています。この記事では、女性に多い肩こりの5つの原因を詳しく解説し、そのメカニズムや具体的な対策、さらに効果的な治療法まで、専門家の視点から分かりやすくご紹介します。つらい肩こりから解放され、快適な毎日を送るためのヒントが満載です。 目次1 女性に多い肩こりの原因1.1 ①デスクワークなど長時間同じ姿勢1.2 ②猫背などの姿勢不良1.3 ③冷え性1.4 ④運動不足1.5 ⑤ホルモンバランスの乱れ2 女性の肩こり対策法 4選2.1 ①ストレッチ2.2 ②適度な運動2.3 ③血行促進(入浴、マッサージなど)2.4 ④姿勢改善3 治療法3.1 薬物療法(消炎鎮痛薬、筋弛緩薬など)3.2 リハビリテーション(物理療法、運動療法など)3.3 ブロック注射、ハイドロリリース4 まとめ5 参考文献 女性に多い肩こりの原因 ①デスクワークなど長時間同じ姿勢 長時間同じ姿勢でいると、肩や首の筋肉が緊張し、血行が悪くなります。デスクワークやパソコン作業、スマートフォンの使いすぎなどは、肩こりの原因となります。 例えば、パソコン作業中に画面に集中しすぎて、気づいたら猫背になっていたり、首が前に出ていたりする経験は誰にでもあるのではないでしょうか。オフィスワーカーに焦点を当てた研究では、キーボードの位置が体に近すぎると肩こりのリスクが約1.5倍高まるという報告もあります。 ②猫背などの姿勢不良 猫背のように姿勢が悪いと、肩甲骨が外側に広がり、肩や首の筋肉が常に引っ張られてしまいます。これは、重いリュックサックを長時間背負っている状態に似ています。常に筋肉が引っ張られている状態なので、血行が悪くなり、肩こりや首こりの原因となります。 ③冷え性 冷え性も肩こりの原因の一つです。体が冷えると、血管が収縮して血行が悪くなり、筋肉が硬くなってしまいます。特に、女性は男性に比べて筋肉量が少ないため、冷えやすく、肩こりになりやすい傾向があります。 ④運動不足 運動不足になると、筋肉量が減少し、血液循環が悪くなります。すると、筋肉に十分な酸素や栄養が行き渡らなくなります。この状態が続くと、筋肉が硬くなり、肩こりや体の様々な不調につながるのです。 ⑤ホルモンバランスの乱れ 女性ホルモンであるエストロゲンは、血管を拡張する作用があり、血行を促進する効果があります。しかし、月経周期や更年期などによってホルモンバランスが乱れると、エストロゲンの分泌量が変化し、血行不良による肩こりを引き起こしやすくなります。 月経前や更年期に肩こりが悪化するという方は、ホルモンバランスの乱れが原因かもしれません。 女性の肩こり対策法 4選 統計によると、35歳から49歳までの女性は、男性に比べて頸部痛(首や肩のこりも含む)のリスクが上昇する傾向があると言われています。 この章では、肩こりで悩んでいる女性のために、効果的な対策を4つ紹介します。これらの対策を参考に、つらい肩こりから解放され、快適な毎日を過ごしましょう。 ①ストレッチ 肩甲骨を意識的に動かすストレッチは、肩こりの改善に効果的です。 例えば、両手を肩の上に置き、肘を大きく円を描くように回します。左右の肩甲骨を寄せるイメージで行います。この動きを数回繰り返すことで、肩甲骨周りの筋肉がほぐれていきます。私も診療の合間にこのストレッチを行い、肩こりの予防に努めています。 また、タオルを使ったストレッチもおすすめです。タオルの両端を持ち、頭の上で軽く引っ張りながら、腕を曲げ伸ばしします。このときも、肩甲骨の動きを意識することが重要です。 デスクワークなどで長時間同じ姿勢を続ける場合は、1時間に1回は立ち上がって軽いストレッチをしたり、遠くの景色を見るなどして、目の疲れを癒すことも大切です。 ②適度な運動 運動不足も肩こりの原因の一つです。適度な運動は、血行を促進し、筋肉をほぐす効果があります。ウォーキングやジョギング、水泳など、無理なく続けられる運動を見つけ、習慣化することが大切です。 例えば、ウォーキングであれば、1日30分を目標に、週に3回程度行うと良いでしょう。 また、ヨガやピラティスなどもおすすめです。これらの運動は、柔軟性を高め、姿勢を改善する効果も期待できます。実際に、ヨガを始めてから肩こりが軽減したという患者さんも少なくありません。 ③血行促進(入浴、マッサージなど) 血行を促進するための対策も重要です。 おすすめは、ゆっくりと入浴することです。38~40度くらいのぬるめのお湯に15~20分程度つかり、体をじっくり温めましょう。入浴剤を使うと、さらにリラックス効果を高めることができます。 また、マッサージも効果的です。肩や首を優しくもみほぐしたり、肩甲骨を意識してマッサージすることで、血行が促進され、肩こりの緩和につながります。 ④姿勢改善 猫背の状態では、肩や首の筋肉が常に引っ張られ、緊張状態が続きます。これは、重いリュックサックを長時間背負っている状態に似ています。 正しい姿勢を保つことが大切です。 座っている時は、背筋を伸ばし、あごを引くことを意識しましょう。壁に背中をつけて立つ練習も効果的です。患者さんには、日頃から正しい姿勢を意識するように指導しています。 >>【セルフチェック】肩こりの重症度診断を紹介|放置すると危険な症状とは 治療法 薬物療法(消炎鎮痛薬、筋弛緩薬など) 肩こりの痛みを抑えるためには、薬物療法が有効です。患者さんの症状に合わせて様々な薬を処方しています。よく使われるのは、消炎鎮痛薬と筋弛緩薬です。 消炎鎮痛薬は、炎症をおさえ、痛みを軽減する薬です。肩こりだけでなく頭痛や生理痛など、様々な痛みに対して効果があります。 筋弛緩薬は、肩や首の筋肉の緊張を和らげ、血行を良くする薬です。筋肉の緊張が強い肩こりに効果があります。 リハビリテーション(物理療法、運動療法など) 物理療法とは、温めたり、電気刺激を与えたり、引っ張ったりすることで、肩こりの症状を改善する方法です。具体的な方法としては、温熱療法、電気療法、牽引療法などがあります。 運動療法は、理学療法士の指導のもとで行う治療法です。主に頸部(首)、肩甲骨、肩関節を動かすことで、症状の回復と運動機能の改善を目指します。 適切な運動を行うことで、筋力強化、柔軟性の向上、姿勢の改善などが期待できます。 ブロック注射、ハイドロリリース ブロック注射は痛みの部位やその周辺に、局所麻酔薬やステロイド剤を直接注入します。目的は痛みの伝達を遮断し、炎症を抑えることです。ハイドロリリースは筋膜の癒着をはがす治療法です。超音波(エコー)で確認しながら、筋膜に薬液を注入します。筋膜とは、筋肉、血管、神経など身体全体を包む膜状組織のことです。目的は組織の柔軟性を回復させることです。両治療法とも、痛みの軽減や機能改善を目指しますが、対象となる部位や治療の焦点が異なります。 まとめ この記事では、女性に特に多い肩こりの原因を5つ、そしてその具体的な対策を4つご紹介しました。 ストレッチ、適度な運動、血行促進、姿勢改善など、どれも今日から始められる方法です。 まずは自分の生活習慣を見直し、できることから始めてみませんか? この記事が、少しでも肩こりが和らぎ、快適な毎日を送れるための一助になれば幸いです。 参考文献 Hoy DG, Protani M, De R, Buchbinder R. “The epidemiology of neck pain.” Best practice & research. Clinical rheumatology 24, no. 6 (2010): 783-92. Jun D, Zoe M, Johnston V, O’Leary S. “Physical risk factors for developing non-specific neck pain in office workers: a systematic review and meta-analysis.” International archives of occupational and environmental health 90, no. 5 (2017): 373-410. 【セルフチェック】肩こりの重症度診断を紹介|放置すると危険な症状とは