ランニングは人気の運動ですが、足への負担は大きく、痛みはランナーにつきものです。ランナーの約2人に1人が足の怪我を経験しているという衝撃的な研究結果も出ています。
この記事では、ランニングで起こりやすい代表的な足の痛みの原因や症状、さらに効果的な治療法と予防ケアまで、整形外科専門医が分かりやすく解説します。ランニングによる足の痛みを改善し、快適なランニングライフを送るためのヒントが満載です。
目次
体表的な病気
足底筋膜炎
足底筋膜炎は、かかとからつま先にかけて足の裏に張っている「足底筋膜」という組織に炎症が起こり、かかとに痛みが出る疾患です。
朝起きた時の一歩目や、長時間座った後に立ち上がった時など、足底筋膜が伸展される際に強い痛みを感じることが特徴です。
ランニングのように足底筋膜に繰り返し負担がかかることで発症しやすく、ランニング愛好家に多く見られます。
特に、急にランニングの距離や強度を上げた場合、硬い路面を走った場合などに発症リスクが高まります。
アキレス腱炎
アキレス腱炎は、ふくらはぎの筋肉とかかとをつなぐ「アキレス腱」に炎症が生じる疾患です。
ランニング中やジャンプ時、つま先立ちをした際にアキレス腱部に痛みを感じることが多く、腫れや熱感を伴うこともあります。
ふくらはぎの筋肉が硬い方はアキレス腱への負担が大きくなり、アキレス腱炎になりやすい傾向があります。
また、加齢とともにアキレス腱の柔軟性も低下するため、年齢を重ねるにつれて発症リスクが高まることも知られています。
最近の研究では、アキレス腱炎を含むランニング関連筋骨格系損傷の発生率が、40%を超えるという報告がありました。

シンスプリント
シンスプリントは、すねの骨(脛骨)の内側下部に痛みが出る症状で、ランニングの初心者によく見られます。
ランニングの距離や強度を急に増やす、あるいは硬い路面でのランニングなど、脛骨周辺への負担が急激に増加することで発症しやすくなります。
ランニング開始時に痛みを感じることが多いですが、運動を続けると痛みが軽減することもあります。
しかし、これは一時的なもので、放置すると安静時にも痛みを感じるようになり、日常生活にも支障をきたすようになります。
扁平足(へんぺいそく)や回内足(かいないそく)といった足の形もシンスプリントのリスクを高める要因となります。これらの足の形の方は、足底のアーチ(土踏まず)が崩れやすく、着地の衝撃を吸収しにくいため、脛骨への負担が増大しやすいのです。
モートン神経腫
モートン神経腫は、足指の付け根に伸びている神経が圧迫されて肥厚し、神経腫と呼ばれるしこりのようなものができることで、痛みやしびれなどの症状が現れる疾患です。
ランニングによって足指の付け根に繰り返し負担がかかることで発症しやすく、特に第3指と第4指の間で起こることが多いです。
ランニングシューズのサイズが合っていない場合もモートン神経腫のリスクを高めるため、適切なサイズのシューズ選びが重要です。
疲労骨折
疲労骨折は、骨に小さなひびが入る骨折です。
ランニングで同じ部位に繰り返し負担がかかり続けると、骨が疲労して耐えきれなくなり、ひびが入ってしまいます。
初期は運動時のみの軽い痛みですが、徐々に安静時にも痛みを感じるようになります。
疲労骨折はレントゲン検査では初期段階での発見が難しく、MRI検査が必要となる場合もあります。
初期の疲労骨折を放置すると、完全骨折に進行する可能性もあるため、早期の診断と治療が重要です。

原因と対策
ランニングによる足痛には、様々な原因が考えられますが、今回は代表的な4つの原因と、それぞれの具体的な対策について整形外科専門医の立場から解説します。
ランニングフォームの乱れ
ランニングフォームの乱れは、足への負担を偏らせ、特定の部位に過剰なストレスを与えます。
例えば、着地の際に足が内側に過度に倒れこむ「オーバープロネーション」は、足底筋膜炎やシンスプリント(過労性脛部痛)などの原因となることがあります。
オーバープロネーションは、足の内側のアーチ(土踏まず)が潰れることで起こり、衝撃吸収がうまくいかず、足底筋膜や脛骨(すねの骨)に負担がかかります。
具体的な対策としては、
- 専門家によるランニングフォームのチェックを受け、改善点を指導してもらう
- 普段から正しいフォームを意識して、ゆっくりとしたペースで走る練習をする
- ランニングドリルでフォームを強化する
- スマートフォンなどで動画撮影を行い、自分のフォームを客観的に確認する
などが挙げられます。
筋肉の柔軟性不足
ふくらはぎや足底の筋肉が硬いと、着地の衝撃を十分に吸収できず、足への負担が増大します。
ふくらはぎの筋肉の柔軟性が低下すると、アキレス腱への負担が増し、炎症を起こしやすくなります。
また、足底の筋肉が硬いと、足底筋膜へのストレスが増大し、炎症を引き起こす可能性があります。
具体的な対策として、
- ランニング前後のストレッチを習慣化する
- ふくらはぎ、アキレス腱、足底の筋肉を重点的にストレッチする
- 体が温まっているお風呂上がりなどに行うとより効果的
- ストレッチは反動をつけずに、ゆっくりと時間をかけて行う
などが有効です。
不適切なシューズ
自分の足に合っていないシューズを履いていると、足への負担が増し、様々な障害を引き起こす可能性があります。
クッション性やサポート性が低いシューズは、足への衝撃を十分に吸収できず、痛みや怪我のリスクを高めます。
例えば、サイズが小さすぎるシューズは、足指を圧迫し、外反母趾やモートン神経腫などの原因となることがあります。
また、サイズが大きすぎるシューズは、足が中で滑り、安定性を損ない、捻挫などのリスクを高めます。
具体的な対策としては、
- 専門店で足のサイズや形状を計測してもらい、適切なランニングシューズを選ぶ
- ランニングシューズは、使用距離に応じて定期的に交換する(目安として500〜800km)
- 必要に応じて、インソール(中敷き)を使用してシューズの機能を補う
などが挙げられます。

オーバーワーク(練習量の多さ)
ランニングの練習量が多すぎると、体に疲労が蓄積し、筋肉や腱、骨などに炎症が起こりやすくなります。
ランニングによる足痛の多くは、このオーバーワークが原因であると言われています。
具体的な対策として、
- 練習量や強度を徐々に上げていく
- 十分な休息と睡眠をとる
- 痛みが出たら無理せず休む
- 自分の体力や体調に合わせたトレーニング計画を立てる
などが重要です。
悪化させないための対処法と予防ケア
アイシング
ランニング後は、足に炎症が起こっている可能性があります。
炎症を抑え、痛みを和らげるにはアイシングが効果的です。
15~20分程度、氷水を入れた袋や保冷剤をタオルに包んで患部に当てて冷やしてください。
凍傷を防ぐため、直接皮膚に氷を当てないように注意し、感覚がなくなってきたら中断しましょう。
アイシングは、ランニング直後だけでなく、痛みを感じた時にも行うと効果的です。
ストレッチ
ランニングによって硬くなった筋肉をストレッチで伸ばすことは、柔軟性を高め、血行を促進し、痛みの緩和や再発予防に繋がります。
アキレス腱、ふくらはぎ、足底筋膜など、下半身を中心にストレッチを行いましょう。
特に、ふくらはぎのストレッチはアキレス腱炎の予防にも効果的です。反動をつけずにゆっくりと、痛みを感じない範囲で行うことが大切です。
お風呂上がりなど、体が温まっている時に行うと、筋肉がリラックスしているため、より効果的にストレッチできます。
マッサージ
マッサージは、血行を促進し、筋肉の疲労回復を促す効果があり、足痛のケアに役立ちます。
入浴後など、体が温まっている時に行うのが効果的です。オイルやクリームを使用すると、より滑りが良くなり、マッサージしやすくなります。
足裏、ふくらはぎ、太ももなど、下半身を中心にマッサージを行い、痛みがある場合は無理にマッサージせず、専門家にご相談ください。
最近の研究では、マッサージによる血行促進効果が、損傷した組織の修復を促進する可能性が示唆されています。
サポーター・テーピング
サポーターやテーピングは、患部を保護し、安定させる効果があります。足首や膝など、不安定な関節をサポートすることで、痛みを軽減し、再発を予防することができます。
テーピングは、専門家による指導を受けるのが望ましいです。
適切なサポーターやテーピングを使用することで、ランニング中の足への負担を軽減し、怪我の予防に繋がります。
専門医の受診
ランニングによる足痛は、先ほど述べたように、足底筋膜炎、アキレス腱炎、シンスプリント、疲労骨折など様々な原因が考えられます。
自己判断でケアを続けると、症状が悪化したり、適切な治療の開始が遅れる可能性があります。
2週間以上痛みが続く場合、安静にしていても痛む場合、患部に腫れや熱感がある場合などは、整形外科専門医を受診しましょう。
レントゲンやMRIなどの画像検査を行い、痛みの原因を特定し、適切な治療を受けることが大切です。
当院では、患者さん一人ひとりの症状に合わせて、適切な治療法をご提案いたします。
まとめ
ランニングによる足の痛みは、原因や症状が多岐にわたります。足底筋膜炎、アキレス腱炎、シンスプリント、モートン神経腫など、それぞれ適切な対処法が異なります。痛みを我慢して走り続けると、症状が悪化し、慢性化したり、日常生活にも支障をきたすことも。
ランニングフォームの見直し、適切なシューズ選び、ストレッチやマッサージなどのケア、そして練習量の調整など、日頃から予防を心がけることが大切です。
痛みを感じたら、まずはアイシングやストレッチを試してみましょう。それでも痛みが続く場合は、自己判断せず、整形外科専門医を受診し、適切な診断と治療を受けることをおすすめします。
参考文献
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