坐骨神経痛でやってはいけないこと|専門医が警告する悪化のリスク

日本では、実に1000万人以上が坐骨神経痛に悩まされているというデータもあります。
この記事では、坐骨神経痛を悪化させるNG行動5選と、症状を和らげるための対策、対処法を専門医の視点から詳しく解説します。
今すぐできる対策を知り、痛みやしびれから解放される第一歩を踏み出しましょう。

坐骨神経痛でやってはいけないこと5選

長時間同じ姿勢での作業

長時間同じ姿勢でいると、腰や臀部の筋肉が緊張し、坐骨神経を圧迫します。
デスクワークや車の運転などは、特に注意が必要です。

例えば、デスクワークでパソコン作業に集中していると、つい2、3時間も同じ姿勢で座り続けてしまう方も多いのではないでしょうか。また、長距離トラックの運転手の方などは、長時間同じ姿勢を強いられるため、坐骨神経痛のリスクが高まります。

長時間同じ姿勢を続けるのは避け、こまめに休憩を取り、軽いストレッチや散歩をするなどして、体を動かしましょう。デスクワークなら1時間に1回は立ち上がって歩いたり、軽いストレッチを挟むことをお勧めします。
運転中なら休憩して軽い体操をしたり、外の空気を吸ったりするだけでも効果があります。

重いものを持ち上げる

重いものを持ち上げる際は、腰に大きな負担がかかり、坐骨神経痛を悪化させる可能性があります。特に、中腰の姿勢で重いものを持ち上げるのは危険です。
例えば、小さなお子さんを抱き上げるときなど、日常生活の何気ない動作でさえ、坐骨神経痛を悪化させるきっかけとなります。

どうしても重いものを持つ場合には、膝を曲げて腰を落とした姿勢で、背中をまっすぐにして持ち上げるようにしましょう。また、荷物を持つときは体幹を意識し、腹筋に力を入れて持ち上げるようにしてください。

無理なストレッチや運動

ストレッチや運動は、坐骨神経痛の改善に役立つこともありますが、間違った方法で行うと、逆に症状を悪化させてしまうことがあります。
特に、前屈や腰をひねる動作は、坐骨神経を刺激する可能性があるため注意が必要です。

例えば、ヨガやピラティスなどで無理なポーズをとったり、急に激しい運動を始めたりすると、かえって症状が悪化してしまう可能性があります。ストレッチや運動を行う際は、痛みを感じない範囲で行い、無理はしないようにしましょう。専門家の指導のもとで行うのが安全です。

冷やす

腰や足を冷やすと、血行が悪くなり、筋肉が硬くなってしまいます。
筋肉が硬くなると、坐骨神経を圧迫しやすくなり、痛みやしびれが悪化することがあります。冬場は特に、冷えから体を守ることが大切です。

痛みを我慢し続ける

坐骨神経痛の痛みを我慢し続けると、症状が悪化したり、慢性化する可能性があります。「少しぐらいなら大丈夫」「そのうち治るだろう」と安易に考えて放置してしまうと、後々大きな後悔をすることになりかねません。

我慢せずに適切な治療を受けることが大切です。

坐骨神経痛を悪化させないための対策

適度な運動

「痛いのに運動なんてできるわけがない!」と思われる方もいるかもしれません。確かに、前述したように激しい運動は逆効果になる可能性があります。

しかし、適度な運動は、血液循環を促進し、筋肉の柔軟性を高め、坐骨神経への圧迫を軽減する効果が期待できます。
例えば、ウォーキングや水泳は、腰への負担が少ないため、坐骨神経痛の方にもおすすめです。近所の公園を15分ほど歩くことから始めてみてはいかがでしょうか。
プールでの水中ウォーキングも、浮力によって腰への負担が軽減されるため、効果的です。

重要なのは、痛みを感じない範囲で、無理なく続けられる運動を選択することです。

正しい姿勢を保つ

日常生活における姿勢は、坐骨神経痛に大きく影響します。

猫背のような姿勢は、腰に負担をかけ、坐骨神経を圧迫しやすくなります。座っているときは、椅子に深く腰掛け、背筋を伸ばすことを意識しましょう。
パソコン作業をする際は、モニターの高さを目の位置に合わせ、キーボードとマウスは体に近い位置に配置することで、猫背になりにくくなります。

また、立っているときは、お腹を軽く引き締め、背筋を伸ばし、顎を引くように意識することで、正しい姿勢を保つことができます。

時々、壁に背中をつけて姿勢をチェックするのも良いでしょう。

十分な睡眠

睡眠不足は、身体の回復力を低下させ、痛みを増強させる可能性があります。
慢性的な睡眠不足は、免疫機能の低下や自律神経の乱れにもつながり、坐骨神経痛の症状を悪化させる可能性があります。

毎日同じ時間に寝起きする、寝る前にカフェインを摂取しない、寝室を暗く静かに保つなど、睡眠の質を高める工夫をしましょう。

ストレスを溜めない

ストレスは、筋肉の緊張を高め、坐骨神経痛の症状を悪化させる要因となります。ストレスを感じると、交感神経が優位になり、筋肉が緊張しやすくなるためです。

趣味を楽しんだり、リラックスできる音楽を聴いたり、友人と会話を楽しんだり、自然の中で過ごしたりするなど、自分なりのストレス解消法を見つけることが大切です。

坐骨神経痛になったら試したい対処法

温める

温めることで血行が促進され、筋肉の緊張が和らぎ、痛みが軽減することが期待できます。
カイロや蒸しタオルで温める、といった方法が手軽で効果的です。

また、お風呂で温まるのも良いでしょう。40度くらいのお湯に15~20分ほどゆっくりと浸かることで、全身の血行が良くなり、リラックス効果も得られます。

ただし、炎症が強い時期に温めると、かえって痛みが増強してしまう場合もあります。

例えば、熱を持っている、触るとひどく痛いといった症状がある場合は、温めるのは避けましょう。
温めてみて痛みが増す場合は、すぐに中止してください。

専門医の受診

坐骨神経痛の原因は実にさまざまです。
例えば、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、梨状筋症候群など、さまざまな病気が原因で坐骨神経痛が起こることがあります。

自己判断で対処するのではなく、まずは整形外科専門医を受診し、正確な診断を受けることが重要です。

医療機関では、問診、診察、画像検査(レントゲン、MRI、CTなど)を通して、痛みの原因を特定します。原因に合わせた適切な治療を受けることで、症状の改善だけでなく、再発予防にも期待できます。

坐骨神経痛の中には、手術が必要なケースもあります。特に、排尿・排便に障害がある場合は、早急に専門医の診察を受けるようにしてください。

理学療法士によるリハビリテーション

理学療法士によるリハビリテーションは、坐骨神経痛の症状改善に非常に効果的です。
理学療法士は患者さんの状態に合わせて、ストレッチ、運動療法、マッサージなどの施術を行います。

これらの施術は、有酸素運動と同様の効果があり、痛みやしびれの軽減、筋肉の強化、柔軟性の向上、姿勢の改善などに役立ちます。

リハビリテーションを行うことで、単に痛みを和らげるだけでなく、再発を防ぐ効果も期待できます。

また、最近の研究では、有酸素運動は神経障害性疼痛関を軽減させる可能性が示唆されています。
専門家の指導のもと、適切な運動を行うことで、坐骨神経痛になりにくい身体作りを目指しましょう。

まとめ

坐骨神経痛でやってはいけないこと、悪化させないための対策、そして症状が出た時の対処法について解説しました。

つらい痛みやしびれから解放されるためには、まず「やってはいけないこと」を知り、悪化を防ぐことが重要です。
長時間同じ姿勢や重いものを持ち上げる、無理なストレッチなどは避けましょう。また、冷えも大敵です。痛みを我慢せず、適切なケアを心がけてください。

そして、坐骨神経痛を悪化させないためには、適度な運動、正しい姿勢、十分な睡眠、ストレスを溜めない生活を心がけましょう。

もし坐骨神経痛になってしまったら、温める、専門医の受診、理学療法士のリハビリテーションといった方法を試してみてください。

痛みが少しでも早く和らぎ、快適な生活に戻れる一助になれば幸いです。

参考文献

  1. Matesanz-García L, Billerot C, Fundaun J, Schmid AB. “Effect of Type and Dose of Exercise on Neuropathic Pain After Experimental Sciatic Nerve Injury: A Preclinical Systematic Review and Meta-Analysis.” The journal of pain 24, no. 6 (2023): 921-938.
  2. Ostelo RW. “Physiotherapy management of sciatica.” Journal of physiotherapy 66, no. 2 (2020): 83-88.

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