レントゲンで問題がないと言われた肩関節|MRI撮影するとわかること。

レントゲンではわからない?MRI検査でわかること5つ

肩の痛み、なかなか治らない…レントゲンを撮ってもらっても異常なし…と悩んでいませんか?

レントゲン検査は骨の状態を診るのに優れていますが、肩の痛みは骨以外の部分、例えば筋肉や腱、靭帯などが原因であることも少なくありません。

このような場合、MRI検査が非常に有効です。レントゲンではわからない肩の痛みの原因を、MRI検査で詳しく見ていきましょう。

肩腱板(ローテーターカフ)の損傷

肩腱板(ローテーターカフ)とは、肩関節を安定させる4つの筋肉の腱の集まりのことです。野球の投球動作のように、腕をあらゆる方向に動かすために重要な役割を担っています。

この肩腱板が損傷すると、肩の痛みや動かしにくさが生じ、腕を上げることが困難になります。特に、夜間痛が特徴的で、寝返りを打つたびに目が覚めてしまうこともあります。

MRI検査では、腱の炎症や断裂の有無、その範囲などを正確に把握することができます。炎症が軽度であれば、安静や消炎鎮痛剤の服用で改善しますが、断裂が大きい場合は手術が必要になることもあります。

肩腱板断裂の大きさや種類

肩腱板が断裂している場合、その大きさや種類もMRI検査で詳しくわかります。

断裂の大きさや範囲は、治療方針を決める上で非常に重要です。例えば、断裂が小さく、腱の周囲の炎症も軽度であれば、保存療法が選択されることもあります。理学療法士による適切なリハビリテーションを行うことで、肩関節の機能を回復できる可能性があります。一方、断裂が大きい場合や、腱が完全に切れてしまっている完全断裂の場合は、手術が必要になることもあります。

腱の断裂は、加齢による変化や繰り返しの動作、外傷などによって生じることがあります。部分断裂であれば軽快する可能性もありますが、断裂の程度が大きい場合は、放置すると断裂がさらに広がり、肩関節の機能が低下する可能性があります。

>>肩腱板損傷の完全ガイド/ 症状から治療法まで整形外科専門医が詳しく解説

肩関節周囲炎(五十肩)の炎症の程度

肩関節周囲炎、いわゆる五十肩は、肩関節の炎症が原因で肩の痛みや動かしにくさが生じる病気です。

MRI検査では、関節内の炎症の程度や、関節包の肥厚などを確認することができます。五十肩は、肩関節の周囲の組織に炎症が起こり、関節包が癒着することで痛みが生じます。肩を動かすと痛みが増強し、特に夜間や朝方に痛みが強くなる傾向があります。

MRI検査では、炎症の程度を評価することで、適切な治療方針を決定することができます。五十肩は自然に治ることも多いですが、痛みが強い場合や長引く場合は、適切な治療が必要です。関節包の肥厚が高度で、関節の動きが著しく制限されている場合は、手術が必要となることもあります。

関節唇の損傷や病変の有無

関節唇とは、肩甲骨の受け皿の部分についている軟骨のリングで、肩関節を安定させる役割を担っています。肩関節は他の関節に比べて不安定な構造をしているため、関節唇が損傷すると、肩に痛みや不安定感、引っ掛かり感などが生じます。

MRI検査では、関節唇の損傷の有無や程度を正確に診断できます。スポーツ外傷で生じやすいBankart損傷や、野球選手に多いSLAP損傷など、様々な種類の関節唇損傷があります。関節唇の損傷は、脱臼を繰り返す原因となるため、放置すると肩関節の不安定性を招き、将来的に日常生活に支障をきたす可能性があります。

骨折や腫瘍などの異常の有無

レントゲン検査である程度の骨の状態は分かりますが、小さな骨折や骨の内部の状態までは見ることができません。MRI検査では、レントゲン検査で見逃されてしまうような小さな骨折や、骨の炎症、腫瘍なども見つけることができます。

例えば、高齢者の場合、転倒などで骨折を生じることがありますが、レントゲン検査では骨折線が明瞭でない場合もあります。MRI検査では、骨の内部の状態まで詳しく観察できるため、小さな骨折や骨挫傷なども見つけることができます。また、骨腫瘍などの異常も早期に発見できる可能性があります。

肩のMRI検査を受ける前に知っておきたいこと4つ

MRI検査の流れと所要時間

当院では、整形外科専門医が、患者さん一人ひとりの症状やご希望に合わせて、丁寧に検査を進めていきます。まずは問診票にご記入いただき、その後、医師による問診を行います。痛みの程度や場所、日常生活での支障などについて詳しくお伺いしますので、気になることは何でもご相談ください。

その後、検査着に着替えていただき、MRI検査室へご案内します。検査中は大きな音がしますが、痛みはありません。検査時間は撮影部位や範囲にもよりますが、通常30分程度です。検査終了後は、医師が画像を診断し、当日結果説明を行います。

費用と保険適用について

肩のMRI検査は健康保険が適用されます。費用は、3割負担の方で、撮影部位や範囲によって異なりますが、おおむね5,000円程度です。他の検査や処置を併せて行った場合は、費用が加算されることがあります。費用についてご不明な点は、お気軽にお問い合わせください。

MRI検査の注意点と準備

MRI検査を受ける際は、金属製のアクセサリーや時計、入れ歯、補聴器、ヘアピン、エレクトロニック機器など、磁気に反応するものは検査前にすべて外していただきます。体に金属が埋め込まれている方(ペースメーカー、人工関節、脳動脈瘤クリップなど)は、MRI検査を受けられない場合がありますので、必ず事前に医師にお伝えください。

閉所恐怖症の方への対策

MRI装置は筒状の狭い空間に入ることになるため、閉所恐怖症の方にとっては検査を受けること自体が大きな負担となることがあります。

当院では、患者さんの不安を少しでも軽減できるよう、検査前にMRI装置の見学や検査の流れの説明を行い、安心して検査に臨んでいただけるよう努めています。また、当院ではオープン型のMRIを採用しており、リラックスして検査を受けていただくことが可能です。

まとめ

肩の痛みでレントゲンを撮っても異常なしと言われた際は、筋肉、腱、靭帯などを詳しく見ることができるMRI検査が有効です。
MRI検査では、肩腱板損傷、五十肩、関節唇損傷、骨折、腫瘍など、レントゲンではわからない痛みの原因を特定できます。検査時間は30分程度で、費用は保険適用で5,000円程度です。

参考文献

  1. 無藤智之, 乾浩明, 二宮裕樹, 駒井正彦, 田中洋, 信原克哉. 肩腱板3D-MRI画像システムの開発. 日本整形外科学会雑誌 2017年91巻2号S287.
  2. Dupont T, Idir MA, Hossu G, Sirveaux F, Gillet R, Blum A, Teixeira PAG. MR imaging signs of shoulder adhesive capsulitis: analysis of potential differentials and improved diagnostic criteria. Skeletal radiology 54, no. 1 (2025): 77-86.