スポーツ整形外科におけるMRI検査の有用性

スポーツによる思わぬ怪我、その適切な診断と治療にMRI検査が不可欠です。レントゲンでは見えない軟骨や靭帯、筋肉の状態を鮮明に映し出すMRI検査は、スポーツ整形外科において極めて重要な役割を担っています。
この記事では、MRI検査で何がわかるのか、その有用性について具体例を交えて解説します。早期発見・早期治療、早期復帰、そして後遺症リスクの軽減。
スポーツを安全に末永く楽しむためにも、MRI検査の知識を深め、適切な医療に繋げましょう。

MRI検査の役割3選

怪我の詳しい診断

MRI検査は、レントゲン検査では捉えにくい骨以外の組織の損傷を詳しく診断するのに役立ちます。例えば、靭帯や腱の断裂、半月板の損傷、筋肉の炎症などを詳細に把握できます。

初期段階ではレントゲン検査で異常が見られない場合でも、MRI検査では腱や靭帯の損傷や炎症といった組織のわずかな変化を捉えることが可能です。
例えば、ジャンプ動作を繰り返すことで膝蓋腱に負担がかかり痛みを生じるジャンパー膝では、初期のレントゲンでは異常が見られないことが多いです。しかし、MRI検査では腱の肥厚や部分断裂、炎症などを早期に発見できます。

また、野球肘やテニス肘といった使い過ぎによる関節の炎症や小さな損傷なども、MRI検査ではっきりと映し出されます。

早期発見は早期治療に繋がり、スポーツへの早期復帰を可能にするだけでなく、重症化を防ぐためにも重要です。適切な時期に適切な治療を開始することで、後遺症を残すリスクを最小限に抑えることができます。

手術の必要性判断

MRI検査で得られた画像から怪我の程度や範囲を正確に把握することで、手術が必要かどうかを判断します。
例えば、靭帯や腱が完全に断裂している場合や、半月板が大きく損傷している場合は、手術が必要となることがあります。一方、軽度の損傷であれば、保存療法(手術をしない治療法)で治癒する場合もあります。

MRI検査の結果は、患者さんにとって最適な治療方針を決定するために非常に重要な情報源となります。

リハビリテーション計画の策定

MRI検査はリハビリテーション計画の策定にも役立ちます。
怪我の程度や治癒の状態を正確に把握することで、患者さん一人ひとりに合わせた最適なリハビリテーションプログラムを作成できます。適切なリハビリテーションを行うことで、機能回復を促進し、後遺症のリスクを軽減できます。

例えば、ジャンパー膝のリハビリテーションでは、太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)のストレッチや筋力トレーニング、ジャンプ動作の訓練が行われます。
バレーボール選手を対象とした海外の研究では、10年以上前にジャンパー膝を発症した選手の70%でMRI画像上の腱の異常が消失していましたが、膝の機能は低下したままでした。このことから、長期的な視点でリハビリテーション計画を立て、継続的に機能改善に取り組む必要があることがわかります。

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MRI検査でわかること5選

骨折、軟骨損傷、靭帯損傷等の診断

骨折、軟骨損傷、靭帯損傷などを詳しく調べることができます。
例えば、バスケットボールのジャンプの着地で膝を捻ってしまった場合、レントゲン検査では骨に異常がないように見えても、MRI検査では半月板や靭帯の損傷が明らかになることがあります。MRI検査では、これらの損傷の程度や範囲を正確に把握することができ、適切な治療方針を決定する上で非常に役立ちます。

筋肉、腱の損傷、炎症の確認

筋肉や腱の損傷、炎症も確認できます。
例えば、野球の投球動作を繰り返すことで肘に痛みが出る野球肘では、腱の炎症や損傷が発見されることがあります。腱は筋肉と骨をつなぐ組織で、使いすぎによって炎症を起こしたり、部分的に断裂することがあります。
肉離れのように筋肉線維が損傷した場合も、MRI検査ではその範囲や程度がはっきりと分かります。

関節内の異常の検出

MRI検査では、関節内の異常も検出できます。
変形性関節症のように関節軟骨がすり減っている状態や、関節内に液体が溜まっている状態なども確認できます。

神経の圧迫や損傷の評価

神経の圧迫や損傷も評価できます。
例えば、椎間板ヘルニアによって神経が圧迫されている状態や、脊柱管狭窄症によって脊髄が圧迫されている状態なども確認できます。神経が圧迫されると、痛みやしびれなどの症状が現れます。
ラグビーのようなコンタクトスポーツでは、脊髄の損傷のリスクも高く、MRI検査が診断に有用です。

腫瘍や感染症の鑑別

腫瘍や感染症との鑑別にも役立ちます。スポーツによる痛みや腫れが、腫瘍や感染症によるものなのかを判断することができます。

まとめ

スポーツ整形外科におけるMRI検査の有用性について解説しました。
MRI検査は、レントゲンでは見えない軟部組織の損傷を鮮明に映し出すことができ、骨折、軟骨損傷、靭帯損傷、筋肉や腱の損傷、炎症、関節内の異常、神経の圧迫、損傷、腫瘍や感染症の鑑別など、様々な診断に役立ちます。
スポーツによる怪我でお悩みの方は、MRI検査で正確な診断を受け、適切な治療とリハビリテーションを行い、一日も早くスポーツを楽しめる生活を取り戻しましょう。

参考文献

  1. Visnes H, Bache-Mathiesen LK, Yamaguchi T, Gilhuus HP, Algaard KRH, Hisdal E and Bahr R. “Long-term Prognosis of Patellar Tendinopathy (Jumper’s Knee) in Young, Elite Volleyball Players: Tendon Changes 11 Years After Baseline.” The American journal of sports medicine 52, no. 13 (2024): 3314-3323.
  2. Ekhator C, Bellegarde SB, Nduma BN, Qureshi MQ and Fonkem E. “The Spine is the Tree of Life: A Systematic Review and Meta-Analysis of the Radiographic Findings Related to Spinal Injuries in Athletes.” Cureus 16, no. 4 (2024): e58780.

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