肩こり頭痛の原因から予防法|専門医が教える治療法

慢性的な肩こり、頭の締め付け感、後頭部や首の痛み…もしかして、あなたも肩こり頭痛に悩まされているかもしれません。本記事では、肩こり頭痛の原因、家庭でできる改善策から治療法まで、幅広く解説します。

肩こり頭痛から解放され、快適な毎日を送るためのヒントが満載です。一緒に肩こり頭痛のメカニズムを理解し、効果的な対策を見つけましょう。

原因

肩こりからくる頭痛は、日常生活に支障をきたす厄介な症状です。放置すると慢性化し、QOL(生活の質)を著しく低下させる可能性もあります。

ここでは、肩こり頭痛を引き起こす5つの原因を詳しく解説します。ご自身の生活習慣と照らし合わせながら、心当たりのあるものがないか確認してみてください。

デスクワークなどの長時間同じ姿勢

長時間のパソコン作業やスマートフォンの操作など、同じ姿勢を長時間続けることは、肩こり頭痛の大きな原因の一つです。

例えば、デスクワークで長時間パソコンに向かっていると、首や肩の筋肉は常に緊張を強いられます。これは、重い荷物を長時間持ち上げ続けているのと同じような状態です。筋肉は疲労し、硬くなり、血流が悪化します。結果として、筋肉に十分な酸素や栄養が供給されず、老廃物が蓄積され、肩や首の痛み、そして頭痛へとつながるのです。

猫背などの姿勢不良

猫背などの悪い姿勢も、肩こり頭痛を招く大きな要因です。

猫背の姿勢では、頭が体の重心よりも前に出てしまい、首や肩の筋肉に大きな負担がかかります。常に頭を支えるために、これらの筋肉は過剰に緊張し、血行不良に陥ります。

運動不足

運動不足は、肩や首周りの筋肉を弱体化させ、肩こり頭痛を誘発するリスクを高めます。

特に、肩甲骨周辺の筋肉が衰えると、肩や首を支える力が弱まり、負担が増大します。すると、筋肉は硬くなり、血流が悪化し、肩こりや頭痛につながるのです。

近年、運動不足による健康への悪影響が広く認識されるようになり、私の外来でも運動習慣の有無を確認するようにしています。患者さんには、ウォーキングや軽い筋トレなど、無理のない範囲で体を動かすことを勧めています。

ストレス

現代社会において、ストレスは避けて通れないものです。しかし、過剰なストレスは、肩こり頭痛の引き金となります。

ストレスを感じると、自律神経のバランスが乱れ、交感神経が優位になります。交感神経が活発になると、筋肉は緊張し、血管は収縮し、血流が悪化します。この状態が続くと、肩や首の筋肉が硬くなり、頭痛を引き起こすのです。

精神的な緊張

精神的な緊張も、ストレスと同様に、自律神経のバランスを崩し、肩こり頭痛の原因となります。

不安や心配事があると、無意識のうちに肩に力が入ってしまい、筋肉が緊張します。精神的な緊張が続くと、肩こりだけでなく、頭痛や吐き気などの症状が現れることもあります。

メカニズム

肩こりと頭痛。一見関係なさそうに思えるこの二つですが、実は密接な関係があるのです。肩こりがひどくなると頭痛がする、というのは多くの方が経験されているのではないでしょうか。一体なぜ肩こりが頭痛を引き起こすのか、そのメカニズムを紐解いていきましょう。

筋肉の緊張と血行不良

筋肉が緊張すると血管が圧迫され、血流が悪くなります。すると、筋肉に必要な酸素や栄養が十分に届かなくなり、老廃物が蓄積されます。老廃物が溜まると、筋肉はさらに緊張し、痛みを生じさせる物質が放出されます。この悪循環が、肩こりの原因となるのです。

最近の研究では、頸部原性頭痛という概念が注目されています。
これは、首の骨や関節、筋肉などの異常が原因で起こる頭痛で、肩こり頭痛と密接な関係があるとされています。頸部原性頭痛の場合、首の動きに伴って頭痛が悪化したり、特定の姿勢で痛みが強くなるという特徴があります。

トリガーポイントの発生

筋肉の緊張が続くと、「トリガーポイント」と呼ばれる硬いしこりのようなものが発生することがあります。筋肉の線維が部分的に収縮して硬くなったもので、押すと痛みを感じます。トリガーポイントは、肩や首だけでなく、背中やお尻など体の様々な場所にできます。
肩こり頭痛の場合は、肩甲骨周辺や首の付け根にトリガーポイントができます。その部分だけでなく、離れた場所にも痛みやしびれなどの症状が現れることがあります。これを「関連痛」と言います。
例えば、肩甲骨の内側のトリガーポイントが、後頭部やこめかみの頭痛を引き起こすことがあります。

私の経験では、患者さん自身はトリガーポイントの存在に気づいていない場合も多いです。診察でトリガーポイントを指で押すと、「そこです!そこが痛いです!」と驚かれる方も少なくありません。トリガーポイントの発生は、肩こり頭痛を考える上で重要な要素です。

神経への刺激と痛みの伝達

筋肉の緊張、トリガーポイント、血行不良などによって、肩や首周辺の神経が刺激されると、その刺激が脳に伝わり痛みとして認識されます。

治療法

薬物療法(鎮痛薬、筋弛緩薬など)

鎮痛薬は、痛みを抑えるのに役立ちます。薬の種類によって効果や副作用が異なるため、医師、薬剤師に相談して適切な薬を選ぶようにしましょう。
筋弛緩薬は、痛みの原因となっている筋肉の緊張を直接的に緩和する効果があります。

理学療法(物理療法、運動療法)

物理療法は、温熱療法や電気刺激療法など、物理的な刺激を用いて肩や首の筋肉の緊張を和らげ、血行を促進する治療法です。
温熱療法は、ホットパックや蒸しタオルなどを患部に当てることで、筋肉を温めて血行を良くします。電気刺激療法は、低周波の電気を用いて筋肉を刺激し、痛みを和らげる効果があります。

運動療法は、専門の知識と技術を持った理学療法士によって行われます。個々の症状に合わせた適切な治療を受けることが重要です。

最近の研究では、緊張型頭痛に対する徒手療法の効果が示唆されています。徒手療法とは、マッサージやストレッチなど、手技を用いた治療法です。様々な手法を組み合わせることで、より効果が高まると考えられています。

ブロック治療(トリガー、神経ブロックなど)

痛みが強い場合や、他の治療法で効果がない場合は、専門医によるブロック治療が必要となることもあります。ブロック注射は、痛みの原因となっている部位に局所麻酔薬やステロイドを注射することで、痛みを軽減する治療法です。

予防と再発防止策

肩こり頭痛を予防し、再発を防ぐには、日頃から生活習慣に気を配ることが非常に重要です。今回は、肩こり頭痛を予防するための具体的な方法をいくつかご紹介します。

適度な運動

適度な運動は、肩こり頭痛の予防に非常に効果的です。運動によって血行が促進され、肩や首の筋肉の緊張が和らぎます。ウォーキングや軽いジョギング、水泳、ヨガなど、無理なく続けられる運動を見つけましょう。

正しい姿勢の維持

猫背などの悪い姿勢は、肩や首に大きな負担をかけ、肩こり頭痛の大きな原因となります。パソコン作業やスマートフォンの操作中は特に姿勢が悪くなりやすいので注意が必要です。

正しい姿勢を意識して、こまめに姿勢を正すようにしましょう。例えば、パソコン作業中は、画面を目の高さに合わせ、背筋を伸ばし、肩の力を抜いて座ることを意識しましょう。

ストレッチ

肩や首のストレッチは、筋肉の緊張を和らげ、血行を促進するため、肩こり頭痛の予防に効果的です。首をゆっくりと左右に回したり、肩を上下に動かしたり、肩甲骨を意識して腕を回したりするストレッチを、1日数回行いましょう。

入浴後など、体が温まっているときに行うと筋肉がより柔軟になり、効果が高まります。朝起きた時や、寝る前など、毎日決まった時間に行うことで習慣化しやすくなります。

ストレス管理

ストレスは、自律神経のバランスを崩し、筋肉の緊張を高めるため、肩こり頭痛の大きな原因となります。ストレスをため込まないよう、自分なりのストレス解消法を見つけることが大切です。

睡眠の質の向上

質の高い睡眠は、心身の健康維持に不可欠です。睡眠不足は、自律神経のバランスを崩し、肩や首の筋肉の緊張を高め、肩こり頭痛を悪化させる可能性があります。

まとめ

肩こり頭痛に悩まされている方に向けて、その原因、メカニズム、家庭でできる改善策から専門的な治療法まで、幅広く解説しました。

肩こり頭痛の原因は、長時間のパソコン作業や猫背などの姿勢不良、運動不足、ストレス、精神的な緊張など、多岐にわたります。これらの原因によって肩や首の筋肉が緊張し、血行不良が起こり、トリガーポイントが発生することで、神経が刺激され、痛みが生じます。

つらい肩こり頭痛を改善するためには、まず、家庭でできるストレッチやマッサージを試してみましょう。鎮痛薬も痛みの緩和に役立ちます。症状が改善しない場合は、理学療法やブロック治療などの専門的な治療も検討してみてください。

肩こり頭痛は、日常生活に大きな影響を与えるつらい症状ですが、適切な対処法を知り、実践することで改善することができます。この記事が、肩こり頭痛に悩まされている方の助けになれば幸いです。

>>女性に多い肩こりの原因とは|ホルモンバランスから姿勢まで解説

参考文献

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