ランナー膝を治す方法|整形外科専門医が教える効果的なアプローチ

ランナー膝の症状と原因を詳しく解説

ランニングを楽しむ皆さんにとって、膝の痛みは悩みの種ですよね。特に膝の外側に痛みが出ると、ランナー膝(腸脛靭帯炎もしくは膝蓋大腿痛症候群:PFPS)の可能性があります。私もランナーであり、メディカルランナーとしても活動しているので、その辛さはよく分かります。今回は、整形外科専門医の立場から、ランナー膝の症状と原因を分かりやすく解説します。

ランナー膝の初期症状

ランナー膝の初期症状は、階段の上り下りやランニング後、あるいは椅子から立ち上がるときなどに膝の外側に軽い痛みを感じることです。安静にしていると痛みは治まりますが、運動を再開すると再び痛みが出現します。この初期症状は、自覚症状が少ないため、ついつい放置してしまいがちです。しかし、適切なケアを怠ると症状が悪化し、慢性的な痛みに悩まされる可能性があります。

ランナー膝の進行した症状

ランナー膝が進行すると、ランニング中にも痛みを感じるようになります。さらに、安静時にも痛みが持続し、日常生活にも支障をきたすようになります。具体的には、椅子に座っている時や、寝返りを打つ時など、膝に負担がかからない動作でも痛みを感じるようになります。また、膝の曲げ伸ばしが困難になり、正座やしゃがむ動作が辛くなることもあります。

ランナー膝の主な原因3つ

ランナー膝の主な原因は、大きく分けて以下の3つです。

  1. 膝蓋骨(膝のお皿)の不安定化:膝蓋骨は大腿骨の溝の中を滑らかに動くことで、膝の曲げ伸ばしを可能にしています。しかし、大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)の筋力低下や、腸脛靭帯(太ももの外側の靭帯)の緊張など、様々な要因によってこの動きが不安定になると、膝蓋骨と大腿骨が擦れ合い、炎症や痛みを引き起こします。
  2. 筋力バランスの崩れ:太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)や内側広筋、外側広筋、中間広筋の筋力バランス、股関節外転筋群など、膝関節の安定に関わる筋肉のバランスが崩れると、膝蓋骨の位置がずれ、ランナー膝を引き起こすリスクが高まります。特に、股関節外転筋の筋力低下は、ランニング時に膝が内側に入りやすくなる「ニーイン・トゥーアウト」を招き、ランナー膝の大きな要因となるため注意が必要です。
  3. 柔軟性の低下:太ももの外側の筋肉(腸脛靭帯)や、ももの裏側の筋肉(ハムストリングス)が硬いと、膝蓋骨の動きが制限され、大腿骨との摩擦が増加しやすくなります。結果として、膝蓋骨に負担がかかり、痛みを引き起こすことがあります。

ランナー膝になりやすい人の特徴

  • O脚の方:O脚は膝関節に常に外反ストレスがかかるため、膝蓋骨の外側への偏位が生じやすく、ランナー膝のリスクが高まります。
  • 扁平足の方:扁平足は、足部のアーチが低下した状態です。これにより、下肢のアライメントが変化し、膝関節への負担が増加するため、ランナー膝のリスクが高まると考えられています。
  • 女性:女性は男性に比べて骨盤が広く、Qアングル(大腿骨と脛骨のなす角度)が大きいため、膝蓋骨が外側にずれやすい傾向があります。
  • 筋力不足の方:大腿四頭筋や股関節周囲の筋力が不足していると、膝関節の安定性が低下し、ランナー膝になりやすくなります。
  • 柔軟性不足の方:腸脛靭帯やハムストリングスの柔軟性が不足していると、膝関節の動きが制限され、ランナー膝のリスクが高まります。
  • オーバーワークの方:過度なランニングは、膝関節への負担を増加させ、ランナー膝の原因となります。適切な休息とトレーニング量の調整が重要です。
  • 不適切な靴を履いている方:クッション性の低い靴や、足に合っていない靴は、膝関節への衝撃を増加させ、ランナー膝のリスクを高めます。

ランナー膝の適切な治療法と予防策

ランナー膝の治療法

ランナー膝の治療は、基本的には保存療法が中心となります。保存療法とは手術をしない治療法のことです。

  • 安静: ランニングなどの膝に負担をかける運動を控え、炎症を抑えることが重要です。どの程度の運動を控えるべきかは、痛みの程度や炎症の強さによって異なります。例えば、軽い痛みであれば、運動量を減らすだけで済む場合もありますが、強い痛みがある場合は、運動を完全に中止する必要がある場合もあります。
  • アイシング: 炎症を抑え、痛みを和らげる効果があります。1回15~20分程度、痛みが強い時は1日に数回行います。凍傷を防ぐため、氷を直接皮膚に当てないようにタオルなどを巻いて使用してください。
  • ストレッチ: 大腿四頭筋、ハムストリングス、腸脛靭帯などの柔軟性を高めることで、膝への負担を軽減します。具体的には、太ももの前側、裏側、外側の筋肉を伸ばすストレッチが有効です。
  • リハビリ: 専門家(理学療法士など)指導のもと、筋力強化やバランス能力向上を目指します。
  • 薬物療法: 消炎鎮痛剤の内服、外用などを行います。痛みが強い場合は、ヒアルロン酸の関節内注射を行うこともあります。
  • 装具療法: サポーターやテーピングで膝関節を安定させます。サポーターは、膝関節の動きを制限し、痛みを軽減する効果があります。テーピングは、膝関節の安定性を高め、痛みの原因となる関節のずれを予防する効果があります。
  • 足底板療法: 足底板で足のアーチをサポートし、膝への負担を軽減させます。足底板は、足の裏のアーチを支えることで、足首や膝関節の負担を軽減する効果があります。特に、扁平足(へんぺいそく:土踏まずがつぶれた状態)の方には有効です。

多くの場合、これらの保存療法を組み合わせることで効果が得られます。

>>ランナー膝の原因と予防法|フォーム改善から装具選びまで

ランナー膝を予防するためのストレッチ

ランナー膝の予防には、大腿四頭筋(太ももの前側の筋肉)、ハムストリングス(太ももの裏側の筋肉)、腸脛靭帯(太ももの外側の靭帯)などのストレッチが有効です。特に、腸脛靭帯は大腿骨外側上顆(たいこつがいそくじょうか:太ももの骨の外側のでっぱり)と摩擦を起こしやすく、ランナー膝の痛みの原因となるため、入念にストレッチすることが重要です。

ランナー膝に効果的なトレーニング方法

ランナー膝に効果的なトレーニングは、股関節周囲の筋肉を強化することです。股関節外転筋群(お尻の筋肉)や内転筋群(内ももの筋肉)を鍛えることで、ランニング中の膝の安定性を高め、膝への負担を軽減することができます。

具体的には、スクワットやランジなどのエクササイズが有効です。また、ランニングフォームの改善も重要です。過回内(かかいない:足の裏が内側に倒れこむ状態)がある場合は、足底板(そくていばん:靴の中敷き)などで矯正することで、ランナー膝の予防につながることがあります。

ランナー膝と他の疾患との見分け方

ランナー膝と似た症状を引き起こす疾患はいくつかあります。代表的な疾患には、変形性膝関節症、半月板損傷、鵞足炎(がそくえん)などがあります。これらの疾患は、レントゲン検査やMRI検査などで鑑別できます。自己判断せずに、整形外科を受診して、医師の診察を受けましょう。当院は整形外科専門ですので、お気軽にご相談ください。

>>変形性膝関節症の手術|適応基準と術式選択|手術以外の選択肢も解説

まとめ

ランナー膝の痛みを解消し、再発を防ぐためのポイントをまとめました。ランナー膝は腸脛靭帯の炎症や膝蓋大腿関節の適合性の悪化などが原因で起こり、初期は運動後、進行すると安静時にも痛みます。主な原因は膝蓋骨の不安定化、筋力バランスの崩れ、柔軟性の低下です。
治療は安静、アイシング、ストレッチ、リハビリなど保存療法が中心で、症状により数週間から数ヶ月かかります。
再発予防には、腸脛靭帯、大腿四頭筋、ハムストリングスのストレッチ、股関節周囲の筋トレ、ランニングフォームの改善、適切なシューズ選びが重要です。
日常生活では長時間の立ち仕事や階段の上り下りに注意し、痛みを感じたら早めに整形外科を受診しましょう。

参考文献

  • Petersen W, Ellermann A, Gösele-Koppenburg A, Best R, Rembitzki IV, Brüggemann GP and Liebau C. “Patellofemoral pain syndrome.” Knee surgery, sports traumatology, arthroscopy : official journal of the ESSKA 22, no. 10 (2014): 2264-74.