ランニングをして膝が痛い|原因、治療、対処法まで専門医が解説

ランニングは手軽に始められる健康的な運動ですが、膝の痛みはランナーにとって悩ましい問題です。実は、ランナーの約7.9%が腸脛靭帯炎を経験するなど、膝の痛みは決して珍しい症状ではありません。この記事では、ランニングによって起こる膝の痛みの原因を4つに分類し、それぞれに適切な対処法を解説します。さらに、ランニングフォームやシューズ選び、トレーニングプランの調整、アイシング、ストレッチなど、具体的な改善策も紹介します。

原因

腸脛靭帯炎

腸脛靭帯炎は、膝の外側に痛みが出る疾患です。

太ももの外側にある腸脛靭帯という組織と、大腿骨外側上顆という骨の出っ張りが擦れることで炎症を起こし痛みが生じます。

ランニングのように膝の曲げ伸ばしを繰り返すと、この摩擦が起こりやすくなります。特に、下り坂を走ったり、硬い地面を走ったりすると悪化しやすいので注意が必要です。

鵞足炎

鵞足炎は、膝の内側に痛みが出る疾患です。

鵞足とは、膝の内側にある3つの筋肉(縫工筋、薄筋、半腱様筋)の腱が付着する部分のことです。この部分に炎症が起こることで痛みが生じます。

ランニングのように膝の曲げ伸ばしを繰り返すと、鵞足部に負担がかかり炎症を起こしやすくなります。

変形性膝関節症

変形性膝関節症は、膝関節の軟骨がすり減り、炎症や痛みを生じる疾患です。

加齢とともに軟骨がすり減りやすくなるため、高齢者に多くみられますが、若い方でも発症する可能性はあります。初期症状は起床時のこわばりや鈍痛ですが、進行すると階段の上り下りや歩行が困難になるなど、日常生活に支障をきたすようになります。

O脚の方は膝の内側の軟骨に負担がかかりやすく、変形性膝関節症のリスクが高まります。

半月板損傷

半月板は、大腿骨と脛骨の間にあり、クッションの役割を果たしています。
ランニング中に膝をひねったり、転倒したりした場合にも起こりやすい損傷です。

半月板が損傷すると、膝の痛み、腫れ、引っ掛かり、ロッキング(関節が動かなくなる)などの症状が現れます。

対処法

フォームの見直し

ランニングフォームは膝の痛みに直結します。

間違ったフォームで走り続けると、膝への負担が増大し、痛みを引き起こす原因になります。

  • 悪い例:かかと着地、ストライド(歩幅)が広すぎる、猫背
  • 良い例:足の裏全体で着地、適切なストライド、背筋を伸ばした良い姿勢

ランニングフォームをチェックする簡単な方法は、スマホで自分のランニング姿を動画撮影することです。客観的に自分のフォームを確認することで、改善点を見つけやすくなります。

シューズの選び方

ランニングシューズ選びも重要です。

自分の足に合っていないシューズは、膝への負担を増し、痛みを悪化させる可能性があります。

  • 悪い例:サイズが合っていない、クッション性がない、古いシューズ
  • 良い例:足に合ったサイズ、クッション性が高い、適切なサポート機能

ランニングシューズ専門店に行くと、足のサイズや形状、ランニングスタイルに合ったシューズを選んでくれます。適切なシューズ選びは、快適なランニングと膝の健康維持に繋がります。

トレーニングプランの調整

急に走りすぎると、膝に大きな負担がかかります。
ランニングの距離や速度は徐々に増やし、休息日を設けることが大切です。

  • 悪い例:毎日長距離を走る、急に速度を上げる、痛みを我慢して走る
  • 良い例:週に数回のランニング、徐々に距離や速度を上げる、痛みが出たら休む

ランニングの頻度、距離、速度を見直し、無理のない範囲で続けられるようにしましょう。

アイシング

ランニング後は、膝に炎症が起こっている可能性があります。アイシングは炎症を抑え、痛みを和らげる効果があります。

ストレッチ

ストレッチは、筋肉の柔軟性を高め、膝への負担を軽減する効果があります。ランニング前後のストレッチは、怪我の予防にも役立ちます。

  • ストレッチの種類:大腿四頭筋、ハムストリングス、ふくらはぎなど、膝周りの筋肉を重点的にストレッチしましょう。また股関節、肩甲骨まわりのストレッチも重要です。
  • ポイント:痛みのない範囲で行うことが大切です。

まとめ

ランニングによる膝の痛み、その原因と対策について解説しました。
痛みを予防するには、正しいランニングフォーム、適切なシューズ選び、トレーニングプランの調整が重要です。痛みを感じたら、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。
当院は、日医ジョガーズ所属し、数々のマラソンにメディカルランナーとして参加する院長によるアドバイス、治療が可能です。

参考文献

むとう整形外科・MRIクリニック